(おつる←ドフラミンゴ)
暑いながらも、晴れやかな青空が広がる良い日和りに。何時も通り、おつるの許可なく執務室に入って来たドフラミンゴの様子は常とは違っていた。
わざとらしい軽薄さは鳴りを潜め、海賊に似つかわしい物騒さを漂わせ。
「・・・・よぉ、おつるさん。その傷、どうしたんだ?」
じわり、と淀んだ暗い声で。書類仕事をしている彼女の右腕に巻かれた包帯を指さし、ドフラミンゴは問う。
重たささえ感じる暗い声に、冷たささえ感じる空気に。けれど怯むことなく、どこか面倒くさそうに。
「・・・・知ってるから、わざわざ来たんじゃないのかい?」
おつるは入室する前から、包帯を指さす前から物騒な雰囲気を撒き散らす男の問いに素直に答えず、逆に問う。
すると、くつりと。悪意に塗れた嗤いを零し。
「新人の海賊風情にしてやられたって情報ぐらいしか、俺は知らねぇな。
・・・・怪我までさせられたことは、知らなかったぜ。」
寒々しさに彩られた答えを、問うたおつるに返す。
それを聞き、ますます面倒くさそうに顔をしかめるおつるの傍に荒々しく近づき。
「・・・・怪我する前に俺を呼べよ。
そうしたら、あんたの身体に傷をつけようとする奴らを全て殺したあと。俺が、あんたを傷つけるのに。」
普通の感性を持っている人間には理解できない想いを、ドフラミンゴは真剣に綴る。
「・・・・どっちにしろ、私が怪我することが決定事項なら。あんたを、わざわざ呼ぶ意味なんかないじゃないか。」
呆れ果てた気持ちを隠しもせずに、疲れきった声を出すおつるに。歪んだ男は嗤いかけ。
「分かってねぇなあ、おつるさん!
いいか?惚れた女が怪我するのを、喜ぶ男がいるはずねぇだろう?
だけどな。惚れた女に、自分の手で傷を刻みつけるなら話は別だ。
それを喜ばない男が、いるはずもねぇ!」
かろうじて前半は理解できるも、後半は全く理解できない持論を、おつるに告げる。
それを聞き、頭が痛いと押さえながら。げんなりした表情で。
「あんただけが理解できる持論を、展開されてもね。」
きっぱり、ばっさりと。おつるは、斬り捨てる。
しかし、そんな斬り捨てなぞ歯牙にもかけず。
「あんなクズ共につけられた傷の痛みで、あんたがアイツらを思い出すなんて最悪に気分が悪い。
もし、万が一にも痕が残ったら。それを見る度に、あんたがアイツらを思い出すなんて最低に胸クソ悪い。
だけど俺がつけた傷で、痛みであんたが俺を思い出すなら最高に気分が良い。
もし、痕が残ったら。それを見る度に俺を思い出すなら、これ以上ないほどに満たされるってもんだ!」
おつるの右腕を忌々しげに、でも傷に触らないよう丁寧に奪い。ドフラミンゴは、早口で撒くしたてる。
(ガ―プ×おつる)
時間や場所を考えず、唐突に寝てしまうクセがガープにはある。
そのクセは「ガープさんだから仕方ない」で、周りも笑って放置してきたのだが。今ほど、それを後悔したことはない。
何故なら海軍本部の廊下にて、鼻提灯を出して立って寝ているガープが。あろうことか、おつるを抱き枕にしているのだ。
廊下のど真ん中で寝ているガープを、邪魔だから起こそうとしたおつるに。寝呆けたガープが抱きついて、そのまま寝ているという羨ましい事態に、周りにいる海兵たちは歯ぎしりして妬んでいる。
あまりに妬ましいから、何人かがガープを遠慮なく乱暴に起きろと叩いたり、おつるから引き剥がすために引っ張ったりしているのだが。
全く起きる素振りを見せず、それどころか離れたくないとばかりに逆にガープはぎゅうぎゅうとおつるにくっつく有様で。
((((この野郎!))))
周りにいる人間の嫉妬と怒りを煽っている。
しかし周りの険悪すぎる空気なぞ、ものともしないで。
「・・・・ぐー・・・・。」
腕に納めた細い身体を、枕にして。なんだか、しあわせそうに暢気にガープは寝ている。
その姿だけでも充分すぎるぐらいに腹ただしいのだが。
ガープの腕のなかに強制的に納められたおつるが全身を赤に染め、細い肩に無遠慮に乗せられたガープの頭をちらりちらりと恥ずかしそうに、でも嬉しそうに見ている姿に。
((((腹たつなあ!))))
さらに、さらに周りの感情は煽られている。
唯一の救いはガープに意識が無いから、照れながらもしあわせそうな表情をする可愛いらしいおつるを知れないことぐらいだが。
その救いだけではおつるに好意を抱いている者にとっては救いにならない。
だって明らかに、おつるがガープを特別に想っていると白状したも同然な光景なのだ。
だから、さっさとこんな光景を見たくなくて無くしたくて。先ほどより乱暴にガープを起こそうと叩いたり、おつるから引き剥がそうと引っ張ったりしているのだが、
この光景を生み出している男は未だに起きずに寝ていて。
そんな男に意識を奪われている彼女は周りの感情に気づけないまま、抱きついているために近すぎる距離にある身体に自分からも触れてもいいかなあと悩んでいるので。
((((羨ましいなあああ!))))
どうしようも出来ないでいる周りがガープに抱く感情は、さらに悪化していた。
そうして自分たちだけでは拉致があかないから、ガープを叩き起こすために大将たちや元帥に直談判しに走りに行ったり。諦めずに叩き起こそうとしたり、引き剥がそうと様々な行動が周りで取られているなか。
「・・・・。」
己の肩に乗せられた男の頭に、こそりと頬を寄せて。ただ1人、おつるだけはこの現状に恥ずかしながらも嬉しがっている。
見事に対照的な2本ですね!
書き手は同じでなのに、なにこの違いよう。我ながら、不思議です(笑)
あと、この2本以外に青キジ×おつる・センゴク×おつるの4本を収録した本となってます。
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