(親1)


二人きりになったマルコは、白ひげの大きな大きな左手に己の手を重ね、たくましい胸に寄りかかる。
珍しく甘えた仕草をするマルコを嬉しげに愛しげに金の瞳を細め、見て。白ひげは楽しそうに笑って、マルコが己にもたれかかりやすいように身体を動かす。
さりげない、優しいあたたかさに大事にされていると実感し。その事に泣きそうになりつつ、重ねた手の薬指をマルコは愛しそうに触れ。

「・・・・オヤジ。結婚指輪を、何で左手の薬指にするか知ってるかい?」

少し擦れた声で、照れくさそうに尋ねる。
唐突な質問に少し驚く白ひげだが、その問いに対しての答えを持っていないから素直に分からないと伝えて。マルコに、答えを尋ねる。
そうすると目もとを、かすか赤にして。少し、震える声で。

「左手の薬指から、心臓にかけて。恋の血管が、通っているそうだよい。
 だから、生涯を共にする相手に。一生の恋を捧げる約束として、そこに指輪をするそうだよい。」

白ひげに、マルコは伝える。
そして、その間中、マルコは拙い仕草で白ひげの大きな大きな薬指を握りしめて。大好きな人の恋の鼓動を、確かめるみたいに触れていた。
そんなマルコの行動に、言葉に。白ひげは、しばらく考え込んで。

「マルコ、俺との結婚指輪が欲しいのか?」

貴方だけが恋する唯一の相手だという約束が欲しくて、この話題を振ったのかと推測して尋ねる。
しかし、それに慌ててマルコは。

「いや、結婚指輪じゃなくて!ただの指輪で、いいんだけれど!!
 ・・・・オヤジの左手の薬指にあわせた、俺が贈った指輪を持っててくれるだけでいいんだけど、ダメ、かよい?」

結婚指輪をつけて欲しいなんて望んでない。ただ、贈った指輪を持っていてくれるだけでいいと頼みこんでくる。
だけど、その言葉に。白ひげは不満げな顔をしたあと、不貞腐れた顔をする。



・・・・だって、こんな話を聞かされて。何故、ただの指輪を贈られて、しかも持つだけで済まさなくてはいけないのだ。



だから、きっぱりと。

「・・・・ダメだな。
 ただの指輪を持つんじゃなくて、結婚指輪をつけろっていうんならいいぞ。」

白ひげは、マルコが望んでいないことこそ望んでいると、はっきり告げる。
言われたマルコは一瞬にして、赤くなり。

「え、ええ?!」

酷く狼狽して、言葉にならない声をあげる。
だけど、動揺するマルコに更に追い討ちをかけるかの如く。

「あと俺が贈った結婚指輪を、お前もつけろ。」

白ひげは、言葉を続ける。
その言葉たちに、これ以上赤くはなれないだろうほどに赤くなったマルコを抱きしめ。

「・・・・・とりあえず、結婚式を考えねぇとな。」

白ひげは、真面目に告げる。
立て続けに与えられる、思いもよらない恋人の言葉に。赤くなるばかりで返す言葉を持たないマルコに、些か乱暴なキスを一つ落とし。

「俺の生涯の恋を、お前に捧げるから。お前の生涯の恋を、俺に寄越せ。」

プロポーズを、した。
白ひげからのプロポーズに、一瞬にして挙動不審に陥って意味のない言葉ばかりを紡ぐマルコであったが。彼が返す言葉なぞ、最終的には一つしかない。
だから、後日。白ひげとマルコの左手の薬指に、輝かんばかりの結婚指輪が嵌められていたのは当然の未来なのだろう。


((貴方だけに、恋することを誓います。))







『恋の血管』は本当な話ですよ。私の捏造じゃないですから(笑)
古代ギリシャが発端です。
こんなことを考え付く昔の人はロマンチストですよねv







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