(大参謀←元帥)





・・・・気遣う行為は、男が女を見下す行為だと。おつるは海軍に所属してから、そう信じこんでいた。
だから、いま。センゴクから寒いだろうからと差し出された白のマフラーを、射殺すかのように睨みつけ。

「いらない。」

おつるは、きっぱりと拒絶する。
しかしセンゴクは、おつるの否定を聞いても引き下がらず。

「唇、青くなっているんだぞ!
 寒いなら、無理せず身に付けたほうがいい!」

なおも、気遣ってくる。
けれど、その心配からくる気遣いを。素直に受け取れる心は、すでに無くしたおつるは。

「い・ら・な・い。」

心配されるような弱さなぞ持っていないのだからと、頑なに拒絶する。
その頑固さに眉根を寄せるセンゴクに構うことなく、おつるはあっさりとセンゴクの前からいなくなろうとするから。

「おつるさん!」

慌てて、センゴクはおつるの後を追う。
そしてあっさりと追いついたセンゴクは、何度も「無理するな」とおつるを諭すばかりだから。

「〜〜〜〜〜!
 馬鹿にするな!!」

ついに、おつるは堪らなくなって。声を張り上げる。
けれど、そのおつるの発言を聞き捨てならないとばかりに。



「俺が、おつるさんを馬鹿にすることは絶対にない!」



センゴクは、こんな時だけ。はっきりと、誓いの如く言い返す。
それに不覚にも。本当に不覚にも、信じそうになって声を詰まらせたおつるの細い首に。

「・・・・おつるさんが倒れたら。その、困るから、無理しないでくれ。」

センゴクは手にしていた白のマフラーをかけて。

「・・・・・唇の色が戻るまでの間でいいから、つけていてくれ。
 そのあとなら、捨てても構わないから。」

おつるに、頼みこんでくる。
その姿を見て。何故か、おつるは「いらない」と拒絶を言い放つことが出来ず。

「・・・・・・・分かったよ。」

かけられたマフラーを突き返すことなく、受けいれる言葉を落とした。
その言葉に泣きそうに安心した、情けないセンゴクの顔を見てしまえば。どうしたって見下されているとは思えず、おつるは戸惑ったが。
けれど、信じ込まされてきた考えはそう簡単に覆せるものではなかったので。

「・・・・・あとで、これ。返しにいくから。」

素直に礼なぞ、言えず。ただ、捨てることはしないとだけしか返せなかった。







 
(いまは、まだ。頑なに溶けない心には届かない、気遣いの意味。)








・・・雪が舞う寒さに耐えられなくて、ついガッとなって書いたss第一弾です。←第一って他にも書いたんかい、己!?
若い時のおつるさんはツンというか尖った氷の塊だったと、私、信じていますから!(信じられても困ります)
それを時間かけて傷つけないように丁寧に丸くしていくのがセンゴクで、豪快に荒削りしながらも傷つけないで丸くするのがガ―プだって夢見ていますから!(言い逃げ逃走)







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