バレンタインで、おつる←ドフラミンゴ
いつも、いつも用がないくせにおつるの元に訪れては傍に居座り、実りのない会話ばかりする男だったが今日は特に酷かった。沸点の高いおつるでさえ、うざいと思ってしまうほどに。
しかし、黙れといったところで聞くはずもないし。かといって実力行使をするにはドフラミンゴの立ち位置「海軍の協力者」というものがあるので、迂闊に出来ない。
どうしたものかと、ひきつる米神に落ち着くよう手を添えて考えていたおつるは。口に何か入っていたら、食べることに多少は気をもっていって静かになるのではないかと思いつき。
そして、思いついたと同時にぺらぺらとよく動く口をめがけて。
「・・・・っと、いきなりなんだ、おつるさん?」
投げつけたが、残念なことに受け止められてしまった。
「それ、あげるから少しは黙ってな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
本当に黙ってしまったドフラミンゴに、素直で気持ち悪いとおつるが思っているなか。手で受け止めた、一口チョコを寒気がするほど見つめ。
「今日という日に、あんたから貰った。気持ちなんざ、その事実の前では意味がねえなあ。」
ドフラミンゴは、妙に上機嫌で。また話しはじめた。
またうるさくなったことに、ややげんなりしながらも。何を言い出したのか理解できずに、怪訝な顔をするおつるに構うことなく。
「フッフフフ!他の男になんぞ渡すなよ、おつるさん。そうでないと、事実すら意味がねえ。」
ぺらぺら、と。彼女の前でだけ持つ、熱を伴ってドフラミンゴは嗤い、告げる。
何がいいたいのか分からないが、男に渡したらおそらく・・・否、目の前の男は血の海を築くことだろうと容易に想像できる物騒さを醸しだしているので。
「・・・・・もうチョコはないから、渡しようがないよ。」
おつるは、それを避ける意味も込めて。本当のことを言う。
そうすれば、ますます嗤いを深め。
「それは最高だな!」
ドフラミンゴは、機嫌を更によくする。
「・・・・・・・・・(意味が分からない)」
つきあっていられないと肩をすくめて、先ほどよりうるさくなった男の声を騒音だと割り切り。おつるは、見られても困らない書類仕事にとりかかった。
(バレンタインに気づかない彼女のチョコに、それでも価値があると彼は嗤う。)
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