(大参謀←青キジ)






本来なら、ここで待機していなければならないガープの姿がないことに。訪れたおつるは大きな、大きな溜め息をついて。

「・・・・また、ふらふらと何処かに行って・・・・!」

執務室にいないガープに、怒りを向ける。
すると、ちょうどその時。通りかかった青キジが。

「どうかしたんですか、おつるさん?」

質問してきたので。

「・・・・・ガープが、また。仕事があるっていうのに、行方を晦ました。」

こめかみを痛そうに押さえて、おつるは答える。
その答えを聞いて、「まあ、ガープさんですからねえ」と、諦めた口調で返す青キジに。「・・・・確かにね」と苦笑いを返してから、おつるは。

「・・・・・・・・はあ、仕方ないねえ。
 もう時間がないから、ガープを探すより他を当たることにするよ。」

さっさと思考を切り替えて、ガープを探すことなく仕事を他のものに頼みに行こうとする。
けれど、それを見て。おつるの手に負えない仕事ならば大将でもある自分の耳にも入るはずなのにと、少しばかり訝しんだ青キジが。

「一体、何の仕事ですか?」

と、おつるに問えば。

「摘発だよ。老夫婦を狙った、悪質なやつのね。
 私とガープが囮の夫婦になる予定だったんだけれど。いないから、他の奴に夫役を頼みにいくよ。」

さらり、と。青キジにとって聞き流せないことを、おつるは口にした。
・・・・おつる本人は知らないことだが、青キジはおつるに恋意を抱いているのだ。
だから役とはいえ、おつるの夫になる男なぞ見たくも、許したくもない青キジは。



「・・・・・・・・夫。俺じゃ、ダメですか?」



非常に真剣な目で、声で。おつるに言うが。

「あんたには、他の仕事があるだろ。
 それに、老夫婦がターゲットなんだ。あんたじゃ、年が足りないよ。」

きっぱり、と。おつるから、駄目だしされる。
その返答に、苦虫を噛み潰した表情をする青キジに。「悪いね」と言いつつも、ちっとも悪そうな顔をしないで笑っておつるは。

「でも、仕事を手伝ってくれようとして、ありがとう。」

礼を言い、立ち去ろうとする。
すると。

「・・・・摘発する相手が、おつるさんが囮になる前に、もし捕まれば。夫って、いらないですよね。」

青キジは、確認するかのように。おつるに、問うてくる。
その質問に、少しばかり目を瞬かせながら。

「・・・・・まあ、捕まえるための囮なんだから。もし囮になる前に捕まったら、いらないけれどね。」

おつるは、答えを返す。
それに重々しく頷いて、常のダルそうな動きからは想像も出来ない機敏さで走って去っていく青キジの後ろ姿に。

「・・・・・なんなんだか、一体・・・・・・。」

訳が分からないおつるは、首を捻るばかりであった。








・・・・・・・・・・・・しかし、一時間後。
身体を一部、凍らされたり焼かれてたり焦がされたりしている、おつるが囮になって捕まえようとしていた悪徳者たちが一人残らず捕まえられて牢に入れられていた現状に。

「・・・・・・一体、どんな手を使ったんだか・・・・・・。」

おつるは、ガ―プのときとは別の意味で。こめかみを痛そうに押さえて、呻く。
捕まえられた者たちの怪我の状態を見れば、誰が捕まえたのかなんて聞かなくても分かる。
分かるけれど青キジだけでなく、赤犬や黄猿、また他の協力者が多数いなければ。こんな短時間で、摘発できないだろう。
しかし、その多数の協力を。短時間でどうやって得ることが出来たのか、さっぱり分からないで頭を悩ますおつるだったが。

「・・・・・まあ、捕まったんならいいか。」

深く考えるなという警告が、頭に響き渡って仕方ないので。思考を放棄して、仕事を放棄したガープに説教をしにいった。








(貴女の『夫』なぞ、見たくも許したくもない強い感情を有するものたちばかりがいる現状に。感情を向けられている当人は、イマイチ分かっていない現実。)










・・・・ちなみにガープは仕事を放棄して、姿を晦ましたのではなく。ガープがおつるさんの夫役をするのに納得していないセンゴクと、争っていたのです(爆)
しかしセンゴクと争っている間に、仕事は終わり。しかも、おつるさんから「仕事もしないで何していたんだい!」と怒られるので今回、一番ひどい目にガープはあっています(笑)










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