(英雄×大参謀)
今日も今日とて、仕事中のおつるの執務室に訪れたガープだったが。
「・・・・・・・。」
なんだか、様子がおかしかった。
いつもなら入っての第一声は「お茶を出してもらって、いいか!」なのに何も言わず、おつるの前に来て。
「・・・・・・・・。」
珍しく言いづらそうに、頭を掻きながら。居心地悪そうに、ガープは立ちつくしている。
その常にない様子に、おつるは訝しむが。けれどガープの様子がおかしくなる事件なぞ耳に入っていないことから、「いつもの奇行」と処理して書類仕事に取り掛かっていると。
「・・・・・・・。
なあ、おつるちゃんがワシに惚れているって本当か?」
誰にも言ったことはない、隠して隠して、ひたすら隠していたことを本人の口から言われた驚きで。
思いきり羽ペンを動かしてしまった右手のせいで書きかけの書類をダメにしただけでなく、勢いつきすぎた右手は横に積まれていた書類まで汚し、机の上から落としまくった。
「・・・・・・・なんのことだい・・・・・・・?」
ここまで動揺を露わにして、すっとぼけるのも滑稽な気がするが。でもガープの口から出ていたのは疑問の問いかけであったから単純明快な思考を騙し、隠しきる自信がおつるにはあった。
けれど、おつるの間の空きすぎた言葉と散らばって汚れた書類たちを前にして。
「・・・・・おつるちゃん、本当にワシに惚れてるんじゃな・・・・・。」
このときだけ頭を働かせて気づいて、確信してしまった男に。おつるは「殴れば忘れるだろうか」等と、物騒な案を真剣に検討している。
何故なら。
(・・・・・・・「結婚した」って報告を聞いた時に、失恋して。「孫に愛されるなら他の愛はいらない」って愚痴を聞いて、また失恋して。
今度は、本人の口から「悪いが」って言われて、またまた失恋かい。)
同じ男に何度、振られればいいんだい私は?そして決定的な失恋を、なんで今更しなきゃいけないんだい?
なんだか切なすぎて遣る瀬無いというか、諦め悪い自身の馬鹿さを恨むべきか頭を抱えるおつるだが。ガープから、先に決定的なことを言われる前に。
「・・・・・安心しな。
同僚、以外の関係を。アンタに、望んではいないよ。」
目の前の男に、恋人や夫になってほしいという望みは、昔、確かにあったけれど。でも、その望みを抱き続けるにはガープが家族に向ける愛を、あまりに見続けてしまった。
だから、昔、確かにあった望みはポロポロと。ボロボロと、想い人の手によって亡くされてしまったが・・・・・・どうしても、『好き』という想いだけは無くせなかった。
そのために、「同僚」という関係で満足するように。長い時間をかけて、己の想いを納得させ昇華させたおつるは。
「だから、いいだろ。
さっさと、出ておいき。」
この想いをうっとおしいと、浅ましいと分かっていても手離したくないから。非常につれなく、可愛げなくガープを追い払う・・・・が。
ガープは、一向に部屋から出ていこうとはしない。それどころか。
「・・・・・・・おつるちゃん。本当にワシに惚れてるんじゃな・・・・・。」
しみじみ、と。感嘆したように呟くので。
「・・・・・・・・。」
殴ってもいいだろうか、と。右手に、おつるが力を込めていると。
「・・・・・ワシも。その、おつるちゃん、好きじゃ、ぞ・・・・・。」
歯切れ悪く、けれどきっぱり言い切ったガープの言葉に。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
思わず、右手に込めていた力を抜き。おつるは呆けた声を出す。
「・・・・・・・・・・じゃからな、ワシも。おつるちゃんがって痛い!!!」
再度、言いきろうとしたガープの頬を。おつるは、思いきり抓る。
「・・・・痛い、かい?ガープ?」
「そりゃ痛いわい!あんなに思いきり抓って!!!!!」
怒鳴り、傷みを訴えるガープに。それでも、意に介さず呆けた声で。
「・・・・・じゃあ、夢じゃ、ない、のかい・・・・・?」
確認してくる、おつるに。不貞腐れた、抓られた所為だけでない赤くなった顔をしてガープは。
「・・・・・・・・。夢にされたら困るわい。」
言いきったあと、おつるの右手をとって。
「・・・・・あったかいから、現実じゃろ。」
と、確認させてくれた。
その、触れられたあたたかさに。
「・・・・・・・・っ!!!!!」
全身、一瞬にして赤く染まりあげたおつるに。
「・・・・・で。返事、くれんのか?」
と、ガープが追い打ちをかけてくるので。あわあわと慌てふためいて、言葉にならないでいるおつるが落ち着くまで判りきっている返事は保留にされた。
(一人でしていた恋が、二人がする愛に変わる日。)
片恋ばかり書いていたから、両想い書いてみました。
可愛く(?)かけて自分的には満足しています。
あ、補足としてガープに教えたのはセンゴクです。おつるさんが不憫だから(爆)
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