(英雄×大参謀)







仕事中だろうと構わず乱入してくる男の手には不似合いな、凛とした、美しい白の花々を見たおつるは。

「!この、馬鹿!!それ、毒花で有名な『死花ーしにばなー』じゃないかい!?」

早く、手から離しな!!

急いでガープの元に行き、無造作に手にしていた死花を叩き落とす。そして死花を持っていた手を、執務室に置いてある給湯で思いきり洗い流す。

あっつ!あついから、おつるちゃん!!」
「我慢しろ、馬鹿!茎以外の部分を触っただけで毒に侵される花なんだぞ、馬鹿!!早く洗い流しして、少しでも毒を薄める必要があるんだ、この大馬鹿!!」

手に触れる熱さに騒ぐガープの手を決して離さず、応急処置をしたあと。ガープを連れて、急いで救護室に向かうおつるの背に向かって。

「・・・・そんなに、馬鹿・馬鹿言わんでもいいじゃろ・・・・・・。」

綺麗だから、おつるちゃんに贈ろうと思ったのに。

不貞腐れたガープの言葉が、投げつけられる。
その言葉に、急いでいたおつるの足は一瞬止まり。



「〜〜〜〜〜〜!!」



次には、全身を真っ赤に染めあげる。
けれど、それはおつるの後ろにいるガープには全く分からない状態なので。

「?おつるちゃん、どうかしたか?」

と、おつるの顔をガープが覗きこもうとしたので。

「!な、なんでもない!い、急ぐよ、ガープ!!」

赤くなりすぎた顔をガープに見せたくないおつるは、先ほどよりも早い足取りで救護室に向かう。
そして救護室に辿りつくと、おつるは詰めていた医療関係者に事情を説明したあと。

「・・・・・・じゃ、私は死花を処分してくるから。
 あとは頼んだからね。」

そう言い残して、己の執務室に駆け足で戻る。
そうして急いで戻った、開け放たれていた執務室の扉近く。ガープの手から叩き落とした、無残に散っている死花を見て。

「・・・・ま、だ。誰にも、気づかれて、いない!処分されて、いない!
 ・・・・・・よかった・・・・・!!」

安堵の息を、おつるは零す。
・・・・人を死に至らしめる花ではあるが、この花は。贈りもの、なのだ。
綺麗だから贈ろうと、はじめてガープから。恋人から、贈られる花であったのだ。
だから。

「・・・・・よかった・・・・・!!」

毒に侵されないように、慎重に花を掻き集めながら。おつるは、泣きそうな顔で零した。
そして集めきった死花の中から、叩き落としたせいで花びらも葉も無くなっている一本だけ抜いて。それを厳重に布で巻き、机の引き出しに隠したあと、残りの死花を処分しに行った。















・・・・・死花を処分して、戻って来たおつるの執務室に。ちょうど、解毒を終えて来たガープに。

「まったく、どうして気づかないんだい!」

と、おつるは死花の恐ろしさについての説教をしはじめた。
それをガープは、バツが悪そうに聞き。

「・・・・・今後からは、気をつける。」

と、珍しく反省している様子が見れたので。言いすぎたかと思ったおつるだが、毒でガープが死ぬ可能性があったことを考えると言い過ぎではないと考え直し。

「・・・・ああ。
 あんたが、いくら強くても毒には勝てっこないんだ。充分、気をつけな。」

最後に、そう締めくくって。説教を止めた。
そして。

「・・・・・・あ、と。ありがとう・・・・・・。」

(毒花だったけれど)花を、自身に贈ろうとした心遣いに。蚊の鳴くような声で、礼を言うおつるに。

「?何が?」

と、ガープは首を捻る。
けれど、おつるが何の礼か詳しいことを言う前に。

「・・・・あ!そうじゃ、ワシ、もう戻らんと!!」

ガープが、おつるの後ろにある時計が指し示す今の時刻を見て。血相を変えて、バタバタと出て行ったために。

「・・・・・・・馬鹿。」

おつるは贈りものの礼を、ガープにきちんと受け取ってもらえることが出来なかった。
そして、この日から一か月もの間、ガープとは仕事の都合上、会うことが出来なかったために。
今さら改めて礼を言い直すことができないでいるおつるの私室には捨てた振りをした、花びらも葉も無い茎だけの死花が1本、花瓶の中にあった。









(・・・・はじめての『贈りもの』を。どうしても捨てれなかった恋心。)











当サイトのおつるさんは、何故かガープが好きすぎる傾向が見られます(爆)









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