(ガ―プ←おつる)




暖を奪わんとばかりに切りつけるが如く、吹きすさぶ寒さのなか。

「ほら、おつるちゃん。あったまるぞ!」

ほかほか、と。湯気をあげるあんマンをガープから差し出されて、多少心動かされるものがあったが。

「・・・・今は仕事中だよ、食べるわけないだろ。」

仕事中に不適切なことは出来ないと、はっきりおつるは断る。
相変わらず真面目じゃなあ、と大口を開けて笑い。ガープは、しかし差し出す手を引っ込めない。

「・・・・食べないよ。」
「まぁ、固いこと言うな!それに寒さでいざという時に動けませんでした、なんてマヌケじゃぞ?」
「誰が、そんなマヌケをするか・・・・んぐっ!」

なかなか食べないおつるに業を煮やしたのか、ガープは無遠慮に小さな口にあんマンを押し込む。
息苦しくて、おつるが思わず口にあるものを噛み切れば。

「よし、食べたな!」

ガープは、満面の笑みを浮かべた。
仕事中だから食べないと言っているのに無理に食べさせ、嬉しそうに笑っている男に。怒りを交えて説教をすべく、おつるが声をあげる一瞬前。

「おつるちゃんに、風邪なんて引いてほしくないからな!
なんせ、元気なおつるちゃんが一番いい!」
「?いいっ、て。一体、何言って・・・・?」
「一番好きってことじゃ!」

ガープは真面目な顔で、声で。はっきり、当たり前みたいにとんでもない発言をするから。

「・・・・っ、なななに、を・・・・?!」

先ほど己が言わんとした言葉、覚えた感情が全て消し飛んだ。
真っ赤になって、あわあわしているおつるを不思議そうに見ながら。

「ほら、もっと食え。」

ガープは、あんマンを差し出す。
それを、真っ赤になって見ながら。好きというのは一体どういう意味なのか尋ねたいが、どう切り出せばいいのか熱くなった思考では思い浮かばず。

「・・・・。」

おつるは口まで持ってこられた温かいものを、とりあえず受け取る。
流石に、また無理に食べさせられたくはないからだ。
けれど、いまだ仕事中だと戸惑いながらも。指先から伝わるぬくもりに負けない熱さを、持て余しながら。

(・・・・い、異性として別に特別に好きって言ったわけじゃない。
た、単に仲間として好きなところを言っただけで。単純な、思慮のない奴だから深い意味なんてない・・・・!)

短くないつきあいから、そう冷静に判断する。
けれど、けれどだ。

(・・・・でも、単なる仲間に。食い意地が張ってるコイツが食べ物を譲るか?そ、それによく考えたら、さっきの食べさせかた!ま、まるでこ、恋人にする・・・・!!!)

今された行動を考えれば判断がまるで違うものになり、好きという言葉がでた感情が友情と愛情のどちらにあるのか辿りつけない。そのため、おつるの混乱も頬に集まる熱も酷くなる一方である。
だから、おつるの心を乱す元凶に本当にどういう意味だと尋ね、答えを得たいのだが。

「・・・・。」

そんな勇気があれば、おつるは当の昔にガープに告白できている。
なので受け取ったあんマンを食べながら、一人悶々としているおつるは寒さなぞ気にする余裕はなく。

(・・・・明確に分かる、好きを言ってくれたらいいのに。)

熱さでやられた頬を隠しながら、他力本願すぎることを考え続けるだけで。結局、何も尋ねることはできなかった。








(分かりやすい好意の告白なはずなのに、分からないってどんな性質の悪さだろう!)









麻理子様、お待たせいたしました!
そして頂いたリク「無意識口説き」が書いていくうちに、何故か「無意識告白」に変化していきすみません!!(土下座)
お、お気に召さないようなら書き直しいたしますので!返品可ですので!
あまりリクに沿えてない作で、申し訳ありません(深深土下座)

今回は企画に参加してくださって、ありがとうございます!(お辞儀)









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