(おつる←ドフラミンゴ)







執務室に戻るなり、おつるの視界に飛び込んできたのは派手なピンクの固まりであった。
そのピンクの固まりは当たり前みたいに、堂々と己の執務室のソファーに、ふてぶてしく座っていたが。敢えて相手にせず、完全に無視して仕事机におつるは向かうが。

「フッフフフ、つれねぇなぁ。おつるさん。」

無視されたピンクの固まりードフラミンゴーは、声をたてて嗤い。通り過ぎようとしたおつるの細い手を、海賊とは思えない丁重さで捕らえる。
しかし捕らえられた当人は、ドフラミンゴの貴重だと断言できる気遣いが含まれた、乱暴でない束縛に何一つ心動かすことなく。



「叩き出されないうちに、さっさと帰りな。」



冷淡に、言葉を紡ぐ。
そんな、この場で彼女を惨殺することを躊躇しない男を恐れることもなく。七武海という立場にある男に媚びることもなく真っ直ぐに、海兵として真っ直ぐにある姿を見て。

「フッフフフ!あんたは、本当にイイ女だな!」

心底、楽しそうに。ドフラミンゴは、嗤う。
けれどドフラミンゴの賛辞に、おつるは喜ぶことなく眉を潜めるだけである。
それに、ますます笑みを深めてからドフラミンゴは。

「なぁ、おつるさん。
あんた、俺のものになる気はないか?」

おつるに会うたびに告げる、口説きを口にするが。

「ない。」

おつるの答えは変わることのない、簡潔な拒絶である。
しかし、断られてもドフラミンゴの笑みは途絶えない。
むしろ、当然だなとばかりに満足げに嗤っている。
・・・・本気で口説いているくせに、その口説きにおつるが万が一にも頷けば。心底、失望するだろう矛盾を抱えた男に。

「いい子だから、帰りな。」

おつるは、捕らえられている手を奪いかえし。穏便に事を済ませようとする。
だけど返ってくるのは笑みだけで、全く動こうともしない男を見て。おつるは、部屋から叩き出す策を練り始めた。
しかし、それに勘よく気づいたドフラミンゴは立ちあがり。

「・・・・またな、おつるさん。」

武骨な、血と悪意に塗れた右手を決しておつるに触れさせることはなく。おつるの左耳についた飾りを、控えめに触れるだけに留め。
この時だけは嗤うことなく、再会を真摯に願う姿に、言葉に。おつるは、けれど心を動かすことはなく。

「会議でなら、また会うさ。」

淡々と、海兵としての再会だけがあるのだと告げてやる。
その冷淡な答えに、しかしドフラミンゴは嬉しそうに。海兵として、揺るぎなく在る彼女を本当に嬉しそうに嗤い、満足そうに立ち去る男に。

(・・・・馬鹿な子。)

様々な感情が籠もったため息を一つ落として、おつるは見送り。何事もなかったかのように、仕事にとりかかった。









(受け入れた瞬間に終わる情を、愛だと言い切る男の言葉に。揺らぐ心はない。)











・・・・・久しぶりにあった友達に説得された結果が、これです(爆)
歪んだ男が好きだろう!?って言われて。言い返せなかった自分が、いと悲し。←本当にな!
でも、ツンなおつるさんは書いていて新鮮で楽しかったです。










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