(剣士×音楽家)





ゾロの手によって、ブルックの細すぎる左手の薬指に巻かれていく赤い、赤い紐のリボン。
それは、まるで運命の赤い糸みたいで。ブルックは、そんなことを考える自身の思考を少しばかり恥ずかしいなと想いつつも。
けれど骨の指を傷つけないために、誓いの指輪の代わりに巻かれていく赤に。あながち、間違いではないのではとも想う。



・・・・だって、骨だけの自身をゾロは好きだと。感謝、していると言ってくれた。



満足な食料もない霧の海で、ブルックが50年も生きていけたのはひとえに骨だけの身体だったからだ。
だから、愛しげにブルックを抱きしめ。
生きて俺に会わせてくれたその身体に、罰当たりだけれど感謝していると言ってくれた彼に。ブルックのほうこそ、感謝してもしたりなかった。
人に怖れられ嫌われるだけの、自分だって好きになれない骨だけの身体を。そんな風に受け止めて、受け入れてくれるゾロに出会えたことは。まるで運命みたいな、奇跡みたいな僥倖で。
いつも、いつまでもブルックの胸の裡をしあわせで満たす。
そうして、いま。確かな愛の形を、ブルックの薬指に与えてくれるゾロに。

「・・・・・・しあわせ、です・・・・・。」

言葉にすれば、簡単に言い纏まるけれど。でも、気持ちは満たされすぎて簡単には言い纏まることなぞ出来ないのに、それを上手く言い表せない。
それを歯がゆく想い、きちんと心を伝えたいと切望するブルックに。ゾロは、優しげに笑いかけ。

「・・・・俺も。しあわせ、だ。」

赤を巻き終わった薬指に、愛しげに口づけ。想いを、返してくれるから。

「わ、たしも。わたしも、しあわせ、です!」

必死、に。つたない言葉でも、心が少しでもいいから届いてとばかりにブルックは言い募る。
そんなブルックに、ゾロは嬉しそうに笑ってから。

「しあわせに、もっとなろうな。」

ブルックを、しあわせにするばかりのことを告げてくるから。とうとう、ブルックの暗い眼窩から、しあわせの雫を溢れさせた。
それに驚き、慌てて慰めるゾロに。悲しくて泣いているのでないと、嬉しさで胸が詰まって上手く伝えられないブルックに。
ゾロは畳みかけるように、優しくしあわせな言葉ばかり告げて慰めてくるものだから。

「・・・・・ぅう・・・・・・・・。」

ブルックが泣きやむことも、言葉が出てくるのも難しくさせていた。
けれど、泣いているブルックからは負の感情は欠片とも感じ取れないから。冷静な第三者の目からは嬉し泣きだと察するのは容易な姿に、けれどブルックの涙に弱いゾロは気付かないまま。
一人、懸命に。ブルックに言葉をかけ続けては、ブルックを泣かし続けていた。




・・・・・・そんな、しあわせとしか言えない日から、もう随分と時間が経ったけれど。
ブルックの左手の薬指には今でもゾロから贈られた、もう随分とボロボロの赤い紐のリボンが巻きついている。
けれど、それを外せとは仲間内の誰も言わない。
一時も外すことなく身につけているそれが、ブルックにとってどんな意味を持っているのか知っているからだ。
だから、嬉しそうに幸せそうに。他人から見たら、価値のないボロの紐を宝物のようにつけているブルックを微笑ましく見守り続けていた。








(貴方だけに誓う、赤に託された愛の証。)










本日、11月22日が「いい夫婦の日」だということを20日にあった、みたらし様のチャットで初めて知り。慌てて、書き上げましたssです(爆)
夫婦といえば「結婚指輪」だと相も変わらずに斜めな思考で書いたので、「どこが、いい夫婦の日にちなんだssなの?」と言われたら、全く反論できないです。すみません(土下座)←謝るの速っ
でも、チャットが楽しくて励まされて、嫌なことも忘れることができたお陰で、これからも頑張っていこうと心の底から思えました。あの時は、皆さま、ありがとうございました(深深土下座)








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