(剣士×音楽家)



「ゾーローさーん!構ってくーださい!!」

いきなり飛びついてきて、そんな甘えたことを言ってきたブルックに。つい、驚いて。

「あいた!」

ゾロが引き離したせいで、床に落ちたブルックは「痛い酷い」と、泣き真似を始めた。
嘘泣きだと分かっているが、俯いて震えているブルックを見ていると庇護欲が湧き、「悪かった」と慰めるようにふわふわとしたアフロを撫で、打ちつけた細すぎる背を労わるように触れれば。
もっと撫でれと頭をゾロの手に擦り寄せ、機嫌のいい猫のように目を細め今にもゴロゴロと喉を鳴らしそうな、泣き真似を止めたブルックの姿に。

「・・・・しょうがねえな・・・・。」

ゾロは、甘やかな声を零す。
その声に、益々「なーでーてー」とグリグリ頭を寄せてくるブルックの望むように撫でている間は、大人しく傍にいるものだから。

(いつも、こうだといいんだけれどよ。)

ゾロは、無理なことを思う。
基本的に、大人しくせずに誰かと騒ぐのがブルックである。
誰かと一緒にいることが嬉しくて騒ぐ姿は、いつだって笑顔だから好きだが。出来たら、その誰かは常に自分であってほしいと思うのが恋人の願いである。
しかし、そうやってブルックを傍に縛れば。

「・・・・構ってくださいー。撫でてくださいー。」

このように、ゾロが修行に精を出して傍にいないことが寂しくて甘えてくる姿は見れなくなる。
それは惜しいなと思うので、ゾロは望むように構い、撫でてやりながら。縛ることは、しないでおこうと決めていると。

「・・・・・まんぞくですー。」

とても満ち足りた顔をして、ゴロンとゾロの胸に甘えて。

「おやすみなさい、ゾロさん。」

ブルックは、くーくーと寝入る。

「・・・・・おいおい。ここで、寝るか?普通?」

寝てしまったブルックを起こさないよう小さな声で、ガクリと肩を落としながら。呆れた声で、呟くが。

「まあ。さっきまで、あんだけウソップ達と騒いでいたんだから、疲れて寝たんだろうけれどよ。」

どうして、こうなったのかを知っているので。どこまでも、ゾロの落とす声は甘い。

「・・・まあ、こんな風に気を抜いた姿を晒すようになったのは。進歩だよな。」

前は、いつだって気を張っていた。
どうしたって、皆の役に立たねばという意識に囚われがちだったのが。いまでは素直に、気を抜いて甘えてくるのはイイ傾向だ。

「・・・・まあ、少し無防備がすぎるのは、どうかとも思うが・・・・。」

恋人の、男の前で、こんな無防備を晒すのは。

「・・・食ってくれ、って言ってるようなもんなんだが。
 まあ。意識のない奴、食っても面白くねえから起きたときだな。」

手痛いものだということを、教え込むかと獰猛に笑って。逃げ出せないように、けれど柔く大切に腕に囲って。

「・・・おやすみ、ブルック。よい夢を。」

甘く、声をかけて。起きたときを楽しみに、ゾロも一緒に眠りに落ちた。










リハビリ作



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