(船医+音楽家)




仲間となった音楽家は手があけば、いつだって曲を紡ぐ。
ヴァイオリンの音をお供にして、声はどこまでも透明で壮大で高らかに厳かに空に響きわたり、溶 け込むように染み入るように、深く。深く、喜びを歌う。
そんな彼の歌を聞くといつも楽しくなるものだから、いつだってチョッパーはアンコールを彼に求める。そうすると。

「お安い御用ですとも!ヨホホホホ!」

断ることなく、いつもブルックは応えてくれるから。船から、歌が絶えることはなかった。
それが嬉しくて、ブルックに。

「楽しいことが溢れているここが、さらに楽しくなって、俺、しあわせだ。」

心から伝えれば、一瞬。音楽家は固まり、そのあと少しだけ震える声で。

「私も。とても、しあわせ、です。
胸が一杯になるほどに。あ、私、いま胸なんてないんですけどね。ヨホホホ!」

「・・・・・音楽家冥利に尽きます!」

今にも泣きそうな、笑いたそうな複雑な想いが絡んだ心からの言葉をおとして。嬉しそうに、また、音楽を奏ではじめたが。
しかし、それはいつもよりテンポが少しだけ遅く、音が少しだけ外れていた曲だったけれど。それはそ れは喜びに満ちていた。





(震えるほどのしあわせは。いま、ここに!)








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