(剣士×音楽家)






寒くないようにと包み込むように、抱き込むように触れくるあたたかさに。

「・・・・手が温かいヒトは、心が暖かいって言いますよね。」

昔、聞いた迷信めいた話しが思いおこされた。

「そうなのか?」
「ええ、だからゾロさんは心が暖かい、優しいヒトなんですよ。」

ふわりと微笑み、ブルックが告げれば。

「・・・・たかが手が温かいぐらいで、んなこと分かるかよ。」

照れくさいのか顔を反らし、ぶっきらぼうにゾロは返す。
面と向かって優しいと言われて恥ずかしがる恋人を、微笑ましげに見ていると。

「だいたい、それだとお前の心が暖かくないみたいだろ?優しいお前を否定するような、そんな言い分は認めないからな俺は。」

苦虫を噛み潰したみたいな、嫌そうな顔で。ゾロは、冷たい手の持ち主だって心が暖かいはずだときっぱり言い切る。
言われた最初は、きょとんとしていたが。

「・・・・やっぱりゾロさんは、優しいヒトです。」

嬉しそうに、ブルックは笑う。
迷信めいた戯れ言を、ブルックのために本気で否定する暖かさに笑み崩れていると。

「〜〜〜いいから、お前はもう黙って温まっていろ!!」

笑顔に耐えられなくなったのか、ゾロは細すぎる身体を強く抱きしめる。
驚くブルックに構うことなく、ゾロは近すぎる距離のため見えなくなったブルックに安堵し。

「・・・・寒かったら、言えよ。」

それ以外は、頼むから今は言わないでくれ。

大胆な行動をしながら、弱気な発言をする。
そんなゾロの胸に顔を埋めながら、ドキドキする心を宥めつつ。

(・・・・言いたいなあ。)

ゾロが照れくさがることを伝えたがるのを、ぐっと我慢して。寒さから守ってくれるあたたかさに、ブルックは身を寄せた。








(貴方は嫌がるけれど、優しさとあたたかさは間違っていないと、こっそり思う。)













戻る