(剣士×音楽家)





「・・・・ゾロさん、受け取ってほしいものがあるんですが!」

表情を、きりりと引き締めて真面目に話すブルックを珍しいなと見つつ。

「何を受け取ればいいんだ?」

彼の真面目な態度から何か大事なものを託されるのかと、ゾロも表情を引き締めて聞く。
すると、途端にブルックは狼狽え始め。

「あ、いや、改まられるもの、じゃないんですけれど・・・・!
 えー、と。あの、で、できたら・・・・いや、絶対、何も言わないで受け取ってほしいんです!それと受け取ったあとも、何も言わないでください!!」

よく分からない頼みを、ゾロにしてきた。

「なんだ、そりゃ?」

当然、訳が分からないゾロは問うが。

「いいから、約束してください!してくれないなら、泣きます!!」
「なんで、そうなる!〜〜〜〜ああ、もう分かったから泣くな!!」

本当に泣き出しそうになったブルックに慌てたため、疑問の答えを得る前に約束してしまった。
すると、ホッとした顔をして「絶対に約束ですよ」念を押したあと。

「はい、これ。」

ピンク色の可愛らしいハート柄で包装された、小さな箱をゾロに差し出してきた。
それに見覚えがあったゾロは思わず声を出しそうになったが、その前に。

「何も言わないで受け取ってください!」

全身、真っ赤になったブルックが止める。
約束した手前、何も言わず差し出されたものーバレンタインチョコレートーを、ゾロが受け取れば。

「し、市販で悪いんですけれど手作りなんて、料理出来ない私にはハードル高すぎてですね。
 だからこその市販なんですが、資金の関係上、私の手作りよりはマシだとおもうのだけれどサンジさんの料理になれているゾロさんの口にあわない可能性大で、美味しくないなんて言われたら流石に立ち直りできそうにないと言いますか、泣きそうになると言いますか。
 ・・・・ぎ、義理とかじゃないんで。やはり、本命だと気持ちの持ちようが・・・・。
 ・・・・ああ、もう!
 と、とにかく黙って受け取って、黙って食べてください!ゾロさん!」

・・・・最後は、逆切れになっている。
まぁ、ブルックにしてみればチョコレートを渡すだけでも恥ずかしいのに、さらに美味しくないと言われたくないからと前もって約束させたみっともなさ、後ろめたさがあるために。
心境はぐちゃぐちゃで、既に自分が何を言っているのか分かっていない。
けれど、ブルックは何を言っているのか分かっていなくとも。ゾロは、分かっているわけで。

「・・・・。」

目をそらして、赤くなった顔を隠して。鋼色の瞳を、うろうろさせている。
とりあえず、なんとか礼を言おうとゾロが口を開けば。

「喋ったらダメ、約束しましたよね?!」

真っ赤な顔で、涙目で。ブルックが叫び、話をさせない。
落ち着く気配が全くないブルックに、どうしたものかと思うも。ゾロも動揺から抜けきれてないので、いい案は浮かばない。
けれど、ブルックから渡された気持ちはじわじわとゾロを侵食して。礼を言うより言いたいことを裡に膨らませてきた。
しかし話すなと頑なに約束させられたので、さてどうするかとゾロは考える。
その間にも、ブルックは何も言わないのはいいのだが思考しているために動かなくなったゾロに、今度は不安になってきて更に挙動不審になってきたが。

「?」

何かを思いついたように顔をあげたゾロが、かすか硬い動きで手をとり、とられた手のひらに武骨な少し赤くなっている指が丁寧に動いて伝えてきたことに。感極まって、ブルックは鍛えられた身体に抱きついた。
突然の抱擁にビクリと、鍛えられた体は戸惑い震えたが。ぎゅうぎゅうと抱きついてくる細すぎる体を、そっと抱き締めかえして。
声でなく伝えた言葉を、声にして改めて伝えたいとゾロは願ったが。それが叶うには喜び泣いている恋人が、約束破棄するまでのお預けであった。



(贈られた愛の気持ちに返すのは、同じく愛の気持ちでしょう。)








なんとか間に合った&そして今年初の更新ですがペースが遅くて、すみません。






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