(剣士←音楽家)
寝ているところに、誰かが近づく気配を感じたために。少しだけ、ゾロは意識を浮上させる。
その人物は、そおっ、と。ゾロを起こさないよう細心の注意を払いながら近寄り、少し離れた場所で足を止め。
そして、そこから声をかけてくるわけでもなく無言で佇み続け。暫くして、ゾロの傍からその人物は離れていった。
(・・・・・・?何なんだ??)
夢うつつのなか、起こしにきたわけでも通りかかったわけでもない人物に疑問を抱いたが。深くは考えこまず、そのままゾロは寝入った。
だけど、次の日も。そのまた次の日も、同じことが繰り返されればゾロとて何がしたいのか気になる。
だから、誰が、何をするために、そこに居るのか確認しようとゾロは寝た振りをした。
そうすれば案の定、近づいてくる気配にゾロが薄眼を開ければ。
(・・・・ブルック?)
こっそり、ひっそりと。ブルックが、そこに立っていた。
そして周りに誰もいないことを確認してから、ブルックはゾロから少し離れた場所に屈みこみ。そこで少しだけ、首を傾ける。
そうすれば寝ているゾロの影と屈んでいるブルックの影がピタリと寄り添い、くっついた形になる様に。ひどくひどく嬉しそうに、しあわせそうにブルックは笑っていた。
(・・・・・・・・・・・・・っ!)
普段の明るい、楽しそうな笑みとは違う、見ているだけでしあわせな気持ちになれるその笑みに。何故か知らないけれどゾロの心臓が強く、激しく跳ねた。
そのせいで、少し動いた身体に気付いたブルックは。浮かべていた笑みを消して、慌ててゾロから離れていった。
それを見送る形となったゾロは、忌々しいとばかりに己の左胸を殴りつけてから。離れていったブルックのことを、考える。
(・・・・・・なんで。寝ている俺にしか、あんな笑いかたをしないんだ。
・・・・・・・・・・・なんか、ムカつくな。)
別に起きている間に近づいて、あの影のようにくっついても怒らないのだからコソコソしなくていいのにと、笑って傍にいればいいのにと首を傾げる男は。
全くもって、ブルックの恋心というものを理解していない。
・・・・・ゾロに、自分が仲間以上の眼で見られていないことを、ブルックは分かっているから。骨だけの自分では仕方ないと諦めて、想いを隠しているのだ。
だけど、どうしても想いが捨てきれないで抑えきれないで。せめて影ぐらい、現実では決してできない触れあいを我慢出来ずに望んで。
こっそり、ひっそり。誰にも気づかれないように、ゾロの迷惑にならないようにブルックは隠れて恋をしていたのだ。
しかし、それをちっとも分かっていない男は。だから、このあと馬鹿正直に「起きているときに近づいて、あの影みたいにくっついて笑っていればいい。」と、ブルックに伝えてしまい。
「〜〜〜〜〜!!!ゾロ、さんの馬鹿あああああああ!!」
罵倒とともに、ブルックに泣かれる羽目になる。
「わ、悪い事は言ってねえだろ、俺は!」
必死、にゾロは言うが。一番知られたくないヒトの口からバレてしまったことを教えられて、ショックすぎて泣きだしているブルックの耳には届かない。
何を言っても泣きじゃくるブルックに、それでも必死に言葉を尽くすゾロの胸には先ほどの、ひどくひどく嬉しそうに、しあわせそうに笑うブルックが繰り返し想い起こされていた。
(〜〜〜〜〜っ!!!
あの、笑みを。ブルックに、起きている時にもしてもらいてえだけなのに!!!)
なんで、上手くいかねえんだと苛立たしげに舌打ちするゾロに。自分のことで不快にさせたのかと勘違いして、更に泣きだすブルックに。
「な、泣くなよ。頼む、から。」
常にない下手な声で、慣れない手つきであやすように触れる様のゾロは。どこからどう見ても、惚れた相手に泣かれて弱っている男の姿であった。
(笑ってほしい、その気持ちのモトに気づき告げれば。即、止めることができる愛しいヒトの涙。)
始めて書いた、ゾロに泣かされるブルック話(と言ってもいいのかな、これ?)
でも、泣きやましてくれるのもゾロなので。そのあとは、しあわせになってくださいv
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