(ゾロ勝利EDでゾロ×ブルック)
「・・・・勝ったぞ。」
戦いで負った、血が止まらないほどの深い傷なぞ歯牙にもかけず。ゾロは、ひたすら真っ直ぐにブルックを見て、告げるが。
けれど、ブルックはゾロの言葉に答えない。否、答えれない。
だって、彼の意識は。ゾロに負けて、倒れている男に全て奪われているのだから。
けれど、そんなブルックの目の前で。倒れていた男の身体は次第に輪郭を失って、天に召される魂のように、土に還る身体のように。
男を構成していたものが『光』となって散らばって逝き、何一つとして世界に残ることなく消えて逝ったその最後を。震えながら、それでも目は逸らさずに。
・・・・・全部、ブルックは見届けた。
・・・・だけど、そんなゾロの存在をすっかり忘れたかのようにして。消えた男がいた場所だけをただひたすら見つめて、立ちつくすブルックが気に喰わないとばかりに、ゾロはブルックに近づき。
遠慮なく、その軽すぎる身体を引きずり倒した。
「ヨホ?!」
いきなりの乱暴な扱いに、慌てた声をあげるブルックに。しかし、ゾロは気遣うこともせず。
「い、痛い!痛い、です!!ゾロさん!!!
皮膚が、破ける!!!・・・・・って、私、皮膚、ないんですけ・・・・どって、痛い、痛いですううう!!!!!」
ブルックの顔を、特に男とキスした口まわりを重点的にして、自身の右腕を使って拭い出した。
これが容赦ない力で擦られるものだから、ブルックは痛み故に抗議するが全くもってゾロには聞き入れてはもらえず。ゾロの気の済むまで、顔を綺麗(?)にされた。
・・・・そうしてから、再び。
「・・・・かえるぞ。」
今度こそ、自分を無視されないように。ブルックの視線を自身で塞いで、ゾロが告げるが。
「え、と。どこ、にですか?」
いまいち、『現実』に戻りきれていないブルックは首を傾げる。
「サニー号。・・・・・あそこ以外に、帰るところはねえだろうが。」
だけど、そんなブルックを怒ることはせず。根気よく、ゾロは話しかける。
「・・・・・ライオン、ちゃん、ですか・・・・・。・・・・・ああ、そうですよね・・・・・。」
そうすれば、『現実』をようやく思い出したかのように口にしたブルックを見て。ほっとしたように、ゾロは肩の力を抜き。
「じゃあ、行くぞ。」
ブルックを丁寧に扱い、立たせてから。彼の細すぎる、白の右手をとる。
「へ?あ、あの、ゾロさん??」
その行動に驚き、問うブルックの声に答えないまま。
「・・・・っ、お、俺が!勝ったんだからな!!」
宣誓、するように力強く。だけど、決してブルックを見ないでゾロは言い放つが。
「え?あ、はい。そう、ですね。・・・・・・で、えと、それで?」
それを言われたブルックは、けれど、いまいちゾロが何を言いたいのか分からず。先を、促すが。
「だから!俺が、勝ったろうが!!」
「?はい、勝ちましたね?」
それでも返ってくる言葉は、同じで。疑問符を飛ばすブルックに、ついにゾロは。
「っっっ、ああ、もう!!わかんねえ奴だな!!!!・・・・勝ったから、俺のもんだろうが、お前!!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい????」
言い切った、が。
しかしソレは戦う直前にヨーキとゾロとで勝手に決めたことで、しかも対象になっている当人はそのときその場に不在だったために。
ブルックにとってソレは、まさに『寝耳に水』である。
だが、そんなブルックに構う余裕のないゾロは。
「とにかく!お前はこれからずっと、俺の傍にいりゃいいんだよ!!」
一方的にそう告げて、会話を終わらせて。もはや何も言うことはないとばかりに、グイグイとブルックを引っ張っていく。
「え?え??え???ええ????」
しかし、いまだ事態についていけず疑問符を浮かべたまま呆けているブルックは、だからこそ見逃している。
目の前を歩いている男の耳が赤く染まっていること、繋いだ手に篭められた熱さや、乱暴に歩いているようで実は歩調をブルックに合わせていること、そして先程の強引で強烈な愛の言葉を。
自分に対する男の想いをいまいち分かっていないから、いまもブルック本人はそれらを見逃し続けているけれど。
利き腕故に触れられることを何よりも嫌い、すぐさま接触を振り払うブルックの右手が男の手を振り払わず、寄り添っていることを。ブルックと同じように、ゾロ本人も見逃し続けていた。
(本人たちの自覚のないところで、想いは。かすか、だけど交わって実っている。)
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