(船医+音楽家)








戦いが始まれば、敵陣に真っ先に飛び込むのは速さに長けたブルックで。
そして元軍人であったためか的確に敵がいま敷いている陣形を見極め、それを効果的に切り崩していく姿は頼もしいことこの上ないのに。

なぜか、チョッパーはブルックが怖かった。

ブルックの『姿』は彼の過去の話を聞いてからはもう怖くなくなったし、彼の『剣技』も彼の影が本人の元に戻ったことによりもう怖くはないはずなのに。

それなのに、どうしてもブルックが怖かった。

それが何故なのか分からないままでいた、その答えは。ブルックが戦いによってその身を欠かしたことで、ようやくチョッパーは分かった。














船内の一室。
そこでブルックの欠けた骨とブルック本体の骨を合わせて動かないように固定してから、牛乳をブルックに飲ませたチョッパーは。震える声で、目の前の相手に問う。



「・・・・ブルックは、死ぬことが怖くないのか?」



肉も血も内臓もない彼の身体は、剣で突き刺しても鉄砲で撃ち貫いても。骨、自体に直接当てなければ無意味なために致命的な傷を負いにくい。
だからこその特攻、粗雑に扱われる身体は。まるで自身に執着がないみたいで、見ていて怖い。

「そんなこと、ありませんよ!だって、死んだらラブーンに会えなくなるじゃないですか?!」
なんて、恐ろしい!!

大げさなまでの動作で怖がるブルックに、安心したように詰めていた息を吐き。

「そう、だよな!!」

チョッパーは、安堵したように笑ったけれど。それでも、まだ、怖い気持ちが捨てきれなかったから。

「でも、次からは一人で行くのは駄目だからな!行くなら、俺も行くから!!」

フォロー、しようと決めた。
死ぬことを怖れているのに、でも自分をいまいち大切にしない彼を。
だけど。

「チョッパーさんは、優しいですね!嬉しいです!!」

その言葉に頷かず、褒めて喜ばせるだけの卑怯な大人に純真な子どもは。

「そ、そんなことねえよ!このヤロー!!」

気付かず、誤魔化されてしまった。










(・・・・・己が死ぬことは、恐ろしいと理解している。だけど、それ以上に。仲間が死ぬことが怖ろしい、臆病者のずるさ。)












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