(布骨)
いやに真剣な顔で、切羽つまった声で。
「ブルックは、一体、誰が好きなんだ?」
告げるヨーキを、ブルックは思い切り殴りたかったが。ヨーキがブルックを逃がさないよう抱きしめているせいで、両手が束縛されているために不可能であった。
その事が、ひどく腹立たしいうえに。ブルックを抱きしめて肩に顔を埋めているヨーキの、常にない弱々しい空気も、ひどくひどく腹立たしかった。
・・・・だいたい。
好きでもない男に、身体を許すなんて、するものか。受け入れるなんて、するものか。
それを、ちっとも分かっていないで。こんなことを真剣にほざくヨーキが、心底腹立たしい。
(・・・・馬鹿だ馬鹿だと思ってましたが、ここまで大馬鹿だったとは!!)
辛辣なことを、内心で思っているブルックに。ヨーキは、顔を決して見せずに。
「・・・・頼む。『言って』ほしいんだ。」
告げた言葉に、ブルックはギクリとする。
・・・・今まで。ブルックが、ヨーキに想いを告げたことはない。
だって、いつだって振り回されて。ブルックばかりが、ヨーキに折れてばかりいるのだ。
惚れたほうの負け、という言葉通り、いつもヨーキに負けっぱなしのブルックだから。せめて言葉くらい、抵抗したかった。
いつだって、態度で『特別』をヨーキに示していたブルックの、半ば意地のような、かすかな抵抗だった・・・・はずなのに。
すぐ傍で、本当に落ち込んでいる男にとって。ブルックの抵抗は、ブルックの予想以上の効果をもたらしているようだった。
(・・・・私が自分を好きじゃないかもしれないって、思いつめるなんて。
本当、大馬鹿です!!)
言わなくても分かるぐらいの、特別ばかりを与えてきたのに!
半分以上、ふてくされた思考で想うブルックだったが。自分が想いを言わない限り、絶対、立ち直ることができない男を分かっているので。
ヨーキが、決して自分の真っ赤になった顔を見れないように抱きしめかえして。ブルックは、やけくそ気味に。
「・・・・一回、しか。言いませんからね!!」
最後の意地を自ら捨てて、ヨーキが望む言葉を紡いだあと。途端、元気になったヨーキが腹立たしすぎて、泣きたくなった。
(・・・・ああ、もう!また、私の負けですか!!)
意地っ張り受けが好き。←誰も聞いてねえよ
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