(赤髪→骨)









風にたなびき、たゆたう淡き泡たちは光の加減にて様々な色を魅せながら、空を彩る花びらのように舞い上がり、降り踊り。世界を艶やかに、華やかに色づかせていく。
そんな幻想なる美しさを、そこかしこで見れる島の町のなかを。ブルックとシャンクスは、二人で歩いていた。



・・・・結局、ブルックの不安は杞憂で。誰からも不審に思われることなく、町を散策できた。



そのことが嬉しいのは、事実。楽しいのも事実。・・・・だけど。
困ったように、意識してしまうのは繋がれた手。ここに来るのを、早く速くと促したシャンクスの左手はいまだブルックの右手を放さず。


「今度はあっちへ行こう!きっと、もっと楽しい!!」


ひどく懸命に、必死に。ひどく擦れた声で、でもなんとか聞こえるようにシャンクスは頑張って告げてからブルックをエスコートするので、周りにいる町の人たちが微笑ましそうにブルック達を見ている。
・・・・おそらく、徹底的に容姿を隠しているブルック『独り』だけでは胡散臭げに見られ、何かヤバイ事情を抱えているが故の変装だと勘ぐられただろうけれど。
シャンクスが何かとブルックを気遣いながら、町を『二人』で楽しもうと連れて歩いてくれるお陰でそんな視線とは無縁でいられるうえ、『普通』に店の人たちからも色々と呼びかけの声をかけてもらえる。
・・・・・のだけど。

「よかったら、うちのグラマンはどうだい?名物お菓子だよ!
 ・・・・きっと、あんたの大事な人も気に入ってくれるはずさ!」

意味ありげにブルックを見ながら言う、店員の最後の言葉を聞けば。必ず、シャンクスは足を止め。

「それ、ください!」

と、即決して言うものだから。
・・・・・・さきほどから、いいように店の人々から『カモ』にされている。

「あの、シャンクスさん!買い物、もう、やめたほうが!!」

だから何度も何度も、制止の言葉をかけて。『カモ』られることを、ブルックはどうにかして止めたいのだけど。

「大丈夫!だから、ブルックは、楽しんでくれるだけでいい!!」

全く、シャンクスに聞き入れてはもらえず。あっさり、と購入されてしまう。
けれどたくさん買い込んでいく商品は決してブルックに払わせず、自分一人で全部払い。なおかつ持たせないという過保護な扱いと献身的な好意、そして決してブルックを離さないでいる左手に。
どうやら周りの人たちに、変な勘違い(というか周りの人は聡く気づいただけなのだが)もさせているようで。

「よかったら、うちの装飾はどうだい?指輪もいいのが揃っているよ!
 ・・・・きっと、あんたの大事な人に似合うよ!」
「それ、くださ・・・・」
「いえいえいえ、結構ですから!い、いきましょう!!」

店員が示してきた、『特別』に想う人に贈るであろう指輪を見て。思わず、シャンクスが即決するまえにブルックが遮り、移動を促してなんとか事なきを得た。

(危ない、危ない。このようなモノを買ってしまったら、絶対、シャンクスさん他の皆さんにからかわれてしまいます!)

・・・・・このブルックの考えは間違ってはいないが。けれど、ここまでシャンクスが商品をブルックのために買い込んでいる時点で、すでに手遅れであろう。
なにせ、ここまで甘く特別にブルックを扱ってるくせに、いまだ『想い』を自覚していないのだ。



「「「アホなほど、鈍すぎる!!!」」」



そう笑われることは既に確定されているシャンクスの未来であるが、ブルックはそれに気付いてはいない。
しかし、それはブルックもまたシャンクスと同じように『想い』に気づいていないのだから、仕方ないことではあるが。

・・・・・まあ、いまはそのことは置いておいて。

そうして、ある程度、町を歩き回ったところでシャンクスは真剣に。でも、かすか不安そうに。


「いま、楽しいか、ブルック?」


少しだけ震えた、擦れた声で問う。
だから、ブルックは。『二人』でいたからこそ、あっさりと町のなかに溶け込め。そして『普通』に散策できたことが、(色々困ったことはあったけれど)楽しかったから。


「楽しいですよ、シャンクスさんのお陰で。」


そう、正直に笑って応えたら。一瞬、呆けたように固まったシャンクスだったけれど。
言われた意味の理解をすれば、瞬時に全身を赤く染め。

「っ、!」

言葉、に詰まる。
だって(自覚はないが)『想い人』から、「楽しいのは貴方のお陰」と笑ってもらって。喜びを感じない者は、いない。
シャンクスも例に洩れることなく、じんわり、と。湧き上がってくるあたたかなものに満たされながら、いまの正直な心の言葉を。


「・・・・・ブルックが楽しいって笑ってくれるのが、俺は楽しい!!」
   

告げるシャンクスの姿は、とてもしあわせそうで、とても楽しそうで。全身で、ブルックを『特別』だと叫んでいるようなものなのだけれど。
全く気付くことのないブルックは、「・・・いい人だなあ、シャンクスさん」、と。暢気にほのぼのと喜んで。


「私もシャンクスさんが楽しいと、楽しいですよ。」


お返しのように告げたブルックの、決して他意はない本心からの言の葉に。
とても、とても嬉しいとシャンクスは喜び。照れたように、甘く甘く、笑ってから。


「次、あっちへ行こう!絶対、楽しいから!!」


繋いだ手に力を込めて、放さないまま。散策を、再開した。











(いまだ『特別』を自覚できてない一人と、理解できてない独りだけど。それでも、『喜び』だけは互いに分かちあえる。)

















ほ、本当に偽物シャンクスでごめんなさい(土下座)
手を繋ぐ+買い物デートは定番だよね!って書きはじめたら予想外に貢ぐ人になっ(殴)
いえ、でも頑張って「当人たちは無自覚なのに傍からみたら完全にバカップル」を目指して甘くなるようにしてみたんですが。・・・・・・・うん、なんか、ごめんなさい。
警告してからの隠しssだけど、最近、好き勝手しすぎでごめんなさい(全力逃走)








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