(大剣豪+骨←赤髪)
今回、は。珍しくも、ブルック独りで出掛けた町中にて。
「・・・・・・・海賊・『鼻唄』だな?」
ブルックは、鷹のようにするどい目をした青年に声をかけられた。
「・・・・・・そうですが。貴方は?」
ブルックを『海賊』と知ったうえで声をかけ。また『海賊』を前にしても、怯える様子も見れないことから己の力量に自信を持つ者だと判断し、警戒しながらブルックが問い返せば。
「お前が乗る船の船長に、用がある。」
聞き捨てならないことを、青年が口にしたので。
「・・・・・・それ、を。素直に聞く、私だと思いますか?」
ブルックの青年への警戒は、瞬時に敵意に変わる。
しかし、それを察知しても青年の態度は変わらず。
「いや。だから、素直にさせるだけだ。」
好戦的に、応じるだけだった。
そのふてぶてしい態度に、冷笑で応えたブルックは。
「貴方如きに、素直にされるか。試してみますか?」
剣を抜く、が同時に。青年も、剣を抜いていた。
刹那。合わさった剣の力に、押し負けたのはブルックのほうだった。
青年に剣を弾かれ、態勢を崩されたブルックの懐にたやすく進入する青年だったが。それは、ブルックの目論見通りだった。
己の非力さを誰よりも理解しているブルックは、基本的に剣を合わせれば打ち負けることは分かっている。
だから弾かれた剣により生じた反動を利用して、逆手にもった鞘で青年の眼を突き刺そうとした・・・が。
「・・・・くっ!」
辛くも、その一手は避けられる。しかし、至近距離での攻撃回避は大きく青年の態勢を崩すこととなる。
それを見逃すことなく、ブルックは剣を青年の心臓に突きたてようとしたが。態勢を崩しながらも青年が反撃してきたため、ブルックは左肩しか貫けなかった。
「・・・・・お強いですねえ。」
今の一撃で仕留めるつもりでいたブルックは、それを避けた青年の技量を褒めるが。
「・・・・・・・。」
言われた青年は、ひどく不満そうな顔をした。
・・・・一方的にやられているのに、褒められても嬉しくないといったところだろうが。そんな青年の気持ちなぞ、ブルックには関係ない。
そもそも仲間に危害を加える用をもつ男の気持ちなぞ、気遣う必要もないため。言葉をかけることなく、ブルックは攻撃に転じる。
ブルックの速い踏み込みに、多少、怯むも簡単にブルックが打ちこんだ剣を青年は斬り払い。さきほどのこともあるために、懐に踏み込むことなく堅実にブルックに斬りかかるが。
「!?」
目の前にいたはずのブルックは、いなかった。・・・・否、一瞬にして地を這うぐらいに身体を沈めて、ブルックは青年に足払いをしかけてきた。
攻撃の最中にしかけられた、いきなりの体術に反応できず、無様に転ぶ青年の利き腕を足で踏みつけ。喉元に剣をピタリと突き付けた、ブルックは。
「名前と、所属する組織名を言いなさい。」
淡々、と。尋問する。
しかし、ブルックに命を握られた青年は動じることなく。
「・・・・・・答える前に問いたい。
お前の強さは、お前の乗る船のなかで何番目だ?」
興味深そうにブルックを見上げ、問うてくる。
「そうですねえ。・・・・・・・とりあえず、どんな手を使っても勝てない相手が4人いますから。私は、5番目ですね。」
少し、考え込んで答えたブルックに。ひどくひどく、嬉しそうに顔を歪め。
「・・・・そうか。なんとも、挑み甲斐がある船だ。」
楽しげに笑う、青年の姿に。戦闘狂かと思いながら、ブルックは。
「さて。次は、こちらが答えてほしいのですが?」
青年の腕を踏みつける足の力を強めながら、問う。そうすれば、すんなりと青年は。
「名は、ミホーク。所属なぞは、していない。」
踏みつけられる傷みなぞ気にせず、答えた。
その答えを、聞いて。
「・・・・・・あなたが、噂の『鷹の目』ですか。」
ブルックは、冷酷な思考を潜めた。
・・・・先日。『鷹の目』という異名をもった剣士が、腕に覚えがある者・名のある海賊に『決闘』を申し込むという話を聞いたばかりだ。
彼は強いのなら誰にでも決闘を申し込み、己の強さを高めることに腐心しているということだった。
おそらく、今回ブルックにミホークが声をかけたのは。ロジャーに用があるといったのは、『決闘』を申し込むためだったのだろう。
(・・・・・・ならば、彼は。賞金稼ぎでも、海賊でもないということですか。
・・・・・・それなら、首を刎ねる必要もないですね。)
賞金稼ぎや、海賊ならば。ロジャーの命を脅かす敵と見なし、情報を得れるだけ得たあと殺そうと思ったのだけれど。
『決闘』を申し込む彼は、相手に大怪我は負わせても命は奪わないと聞いているので。敵と見なさないでいいだろうと判断した・・・・・・・現時点では。
「・・・・・・?」
そんなブルックの思考なぞ分からないミホークは、黙ったままのブルックを不思議そうに見上げて。
「殺さないのか、海賊。」
あっさり、と。怖れることなく聞いてくるので、ブルックは。
「敵なら、殺しますけれどね。
貴方は『決闘者』みたいですから、見逃しますよ。」
今回だけは、という言葉を告げないまま。ミホークの利き腕を踏みつけていた足と喉元に突き付けていた剣を、ブルックは退けた。
そのお陰で自由になった身体を起こしたミホークに、もう興味を失ったブルックはさっさと立ち去ろうとすると。
「・・・・・待て。」
その足を止めるために、ミホークから声をかけてきた。
けれど、それに応じる義理の無いブルックは足を止めない。
止まることのないブルックに、ミホークは「待て!」と声をかけながら、ブルックを追いかける。
そうして、横に並んだミホークにブルックは訝しげな視線を寄こしながら。
「・・・・・・なんですか?
私程度に負ける腕前なんですから、ロジャーさんに今『決闘』を申し込みしても、すぐに貴方は負けるだけでしょう?
なら腕を磨いてから、また申し込みに来たらいいでしょうから。いまは、私に何の用もないでしょう?」
さっさと腕を磨きに行ったら、どうですか?
所々に(正論なだけに)キツい言葉を入れつつ、言葉を寄こすブルックに。少し、だけ躊躇っていたがミホークは。
「・・・・今度。また、手合わせをしてもらえないだろうか?」
ブルックが想いもよらないことを、口にした。
「・・・・・・・・・・・私、とですか?」
思わず、呆けた口調になるブルックに。真面目な顔で、真剣な声でミホークは。
「お前の剣の腕もさることながら、状況に応じて体術も組み込める柔軟性に学べるものがある。
だから、また手合わせしてもらいたい。」
己の強さを高めたいのだと、真摯に訴えてくる・・・・・・が。
その高めた強さで、いずれロジャーを倒すつもりでいる男の頼みなので。ブルックは、受け入れる気がない。
けれど、どう言えば。手合わせを、ミホークは諦めてくれるかとブルックが思案していると。
「・・・・・・・ブルック!!」
思いきり「心配していた」と、でかでかと顔に張り付けて。シャンクスが、ブルックの元に駆けてきた。
「町中で、喧嘩しているって聞いてきたんだけど、無事か!?」
骨の身体を晒さないよう、全身を服や仮面で隠しているために。ブルックの今の状態が分からないため、不安げに問うシャンクスに。
「大丈夫ですよ。怪我してませんから。」
「良い人だなあ」、と。ほんわかしながら、ブルックは、シャンクスを安心させるために答えた。
「そっか。良かった!・・・・・・・ん?誰だよ、お前!」
相変わらず、ブルックに大きく意識を向けているので。ミホークにシャンクスが気付いたのは、今だった。
そんなシャンクスのことを、一瞥しただけで終わり。相手にせずミホークは、ブルックに。
「これ、を。受け取ってほしい。」
そう、告げて。電伝虫を、渡してくる。
「これは?」
「それで、俺と直接連絡がとれる。
・・・・・腕を磨いて強くなったとき、連絡する。そのとき、近くにいるようだったら手合わせを。」
「ちょっと待てよ!お前!」
無視される形になったシャンクスが、咬みつくが。またしても相手にせず、頭をさげて頼む込むミホークに。
「・・・・・・分かりました。連絡を受けた時に近くにいるようだったら、手合わせします。」
『海賊』なんかに頭をさげ、電伝虫という決して安くはない連絡手段を『海賊』なんかに渡してまで望む手合わせを。断る言葉が、ブルックから出てはこなかった。
「・・・・・・感謝する。」
そうして、また頭をさげて。去っていくミホークの後ろ姿を見ながら。
(・・・・・馬鹿、をした自覚はありますが。
ロジャーさんの手を煩わせないよう、私も腕を磨き。また、勝てばいいだけの話です。)
そう、結論づけたブルックに向かって。
「・・・・・・・・・あいつと手合わせするときは、俺も一緒に行くからな!」
シャンクスが、明言する。
「え?いや、行くって・・・・。」
「決めたんだ!だから、ついていく!!!」
驚くブルックに、たたみかけるように告げて。
「・・・・帰ろう、ブルック!」
ミホークが去った方向を、強く強く睨みながら。シャンクスはブルックの手をとって、オーロ・ジャクソン号目指して走っていった。
「わ、わ!ちょ、早いですよ、シャンクスさん?」
少し、もたつきながら。手を繋がれているために、シャンクスと共に走りながらついてくるブルックに。
色々な感情が沸き起こって、言いたいことだらけで、聞きたいことだらけで、ぐちゃぐちゃで纏まらないために。
「・・・・・・・・・。」
言葉がでないシャンクスは。とにかくブルックを少しでもミホークから離したくて、走った。
(・・・・・・・・なんだよ、あいつ!ブルックと『約束』なんかして!!)
未だに、ブルックへの『想い』の自覚がないせいで。ブルックと二人で会う『約束』をしたミホークに嫉妬している自覚がないシャンクスだが、ミホークがムカつくことだけは自覚しているので。
(・・・・・ブルックが手合わせする前に!俺が戦って、負かしてやる!!)
そう、決意して。ブルックの手を強く、強くシャンクスは握った。
・・・・・・・けれど後日。
ミホークと戦い、引き分けることとなったことに納得できないシャンクスが。再戦を、ミホークに取りつけることとなる。
(決着のつかない勝負の、はじまり。)
・・・今回は、一杯、ブルックの強さに夢を詰め込みました(晴れやかな笑顔)←言い切っちゃたよ、この人!?
そして、今回も。原作で、ミホークとシャンクスは顔見知りみたいだし。「決着」がついてない描写もあったことだし。IF設定内で好き勝手捏造しました、いつもの如く(死ね)
これを契機にして、二人、ライバルになって。腕を競いあえばいいと、夢見ています。
・・・・・・・・思いきり、好きなように書いたssですが、氷魚様に献上します!
リク、ありがとうございました!
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