(狙撃者+音楽家)





最近、仲間になったばかりのブルックはいつだってニコニコしている。
用件のみの話をしているだけでも、誰かの姿を見かけただけでも。
いつだって、ニコニコしている。
そして暴言をぶつけられたときでも、石持て追いかけまわされたときでも。
それでも、変わらず。いつまでだって、ニコニコしているから。

「・・・・なんで、笑うんだ?」

それが不思議で仕方なくて、ウソップは問う。
・・・・彼は、独り、だったから。誰かと話せたり、誰かの姿を見つけられるだけでも嬉しいという気持ちは、まだ分かる。
だけど、否定の言葉・拒絶の行動にまで嬉しそうに笑う気持ちが分からない。
だからこその質問に、返ってきた答えに。



「私の存在否定の言葉だって、嬉しいですよ!だって、そこには私以外の『人』がいるんですから!!」



絶句、した。
そして、また。ニコニコ、とウソップを見るブルックに。思わず「なんだよ、それ!おかしいだろう!!?」と怒鳴ったけれど。

「・・・・そう、なのかもしれません。
 ですが、『独り』、でない現実はそれだけで。
 それだけで、しあわせなことなんですよ。」

そう、笑うブルックの。『何』を怒ればいいのか、ウソップには分からなかった。





50年。独りで過ごしてきた彼の寂しさから生まれた、喜びの感じかたを。どう、怒ればいいのか分からなくて声につまる。





・・・・・そういえば、最初の出会いの時だってそうだった。
動いているガイコツの彼をルフィ以外の誰もが恐れ、否定していたときだって。

『今日はなんて素敵な日でしょう!!人に逢えた!!!』

そう、嬉しそうにわらっていた。
そのことに今更のように気付けば。余計に、何を言えばいいのか分からなくて落ちる沈黙のなかでさえ。
常と同じ、笑顔を浮かべるブルックに。
だけど、どう考えたっておかしいと思う。
冷たくされたときでも、楽しいと笑うなんて。
酷い目にあったときでも、嬉しいと笑うなんて。
そんなの、絶対、おかしいことだ。
だから、上手くまわらない口でも必死に。


「ブルック、笑うことが『悪い』わけじゃないけど。でも、それだと、その考えかただと。俺は、俺達は、かなしい!」


巧く纏まらない言葉を、気持ちを伝える。
そうしたら、虚をつかれたように。思いがけないことをぶつけられたように、ブルックは驚いていたけれど。
暫くしてから。


「・・・・・・善処、します。」


少し戸惑ったような、困ったようなバツの悪そうな声で。なんとか、考え直してくれた。
それに、ホッとしながら。

「おう!絶対だからな!!」

念を押すように、返した言葉に。
ブルックは、今度こそ笑わなかった。











(少しづつでいいから、受け入れてほしい。『笑う』、本当の意味を。)













46巻を、読み返して思い立った話。









戻る