(剣士×音楽家)







おずおずと、もじもじと。かすか、震える声で成された。

「・・・・2人、きりに。なりたい、です。」

珍しい、ブルックからの誘いに。ゾロは最初、素直に喜んだ。
恥ずかしがりや恋人はこんな誘いすら躊躇い、口にしてはくれず。いつだってゾロから2人でいたいと誘ってばかりいたから、純粋に嬉しかった。
だけど、2人きりになった瞬間。ブルックからされたくちづけには喜びと同時に、訝しむ気持ちが芽生えた。
・・・・いや、恋人からのキスが嫌なわけではない。決して、決してだ!
しかし2人きりになりたいと言うことさえ、恥ずかしがって出来ないでいたブルックから。いきなり、くちづけてきたのだ。
だから唐突な大胆さに、何かあったのではないかとゾロが考えてしまうのは、当然の流れであった。
しかし、ゾロが考えている間にもブルックからの触れるだけの、拙いくちづけは続き。更には。

(・・・・おい、おいおいおい?!!)

ゾロの衣服まで、脱がそうとしてきた。
・・・・いや、恋人からの積極的な行動が嫌なわけではない。むしろ歓迎で、しあわせだが・・・・!
けれど、けれどだ。再び言うが、2人きりになりたいと言うことさえ恥ずかしがって出来ずにいたブルックが仕掛けてきたのだ。
だから思いつけもしなかった大胆なブルックに、思考は心臓は乱されるも。しかし訝しむ気持ちは更に強まり、かろうじて現状にゾロは溺れずにいた。
とりあえず煩い心臓を無視して、ブルックに何かあったのかとゾロが問いただそうとするが。

「・・・・。」

ゾロに触れる指先は震え、泣きそうに苦しそうに潤んだブルックの表情を見てしまえば。問いただす前に、ブルックの背を宥めるように軽く叩き。

「少し、落ち着いて。話をしてもいいか?」

精一杯、恐がらせないように優しくゾロは問う。

「っ!!」

けれど言われた途端、ビクリと竦み。ブルックは、泣きそうに震える。
そんな震える体を落ち着かせるように、ゾロは何度も細すぎる背中をさすり続ける。
そうすれば、だんだんとブルックの震えは落ち着くが。でも、泣きそうな苦しそうな表情は変わらない。
そして、変わらない表情のまま。



「・・・・ごめんなさい。」



ブルックは俯き、謝罪してきた。
何故、謝ってくるのか分からず瞳をぱちぱちとさせているゾロに。

「上手く出来なくて、ごめんなさい。が、頑張ったんですけれど。」

しゅん、と。ブルックは、うなだれて。

「やっぱり、私、慣れなくて。こんなんじゃ、ゾロさんに捨てられてしまいますよね。」

爆弾発言を、落とした。
あまりに、あまりなブルックの発言に。暫くの間、固まっていたゾロだったが。

「・・・・捨てる?誰が、誰を?」

低い、低い声で尋ねる。
怒りが滲んだ男の声に、ビクリと身を竦ませるブルックに構わず。

「・・・・なあ、ブルック?
俺がお前に捨てるなんて冗談にしては性質が悪いし、本気で言ってるなら証明するために閉じ込めるぞ?」

物騒極まりない発言を、続けた。
「どこに閉じ込めるんですか!?」と叫び、慌てふためくブルックに。けれど答えを聞くまで容赦なぞしてやるかとゾロは逃げられないように細すぎる身体を抱きしめて、視線をあわせ。

「どうなんだ、ブルック?」

恋人に、問う。
始めは近い距離に、怒り混じりの真剣さに、おろおろしていたブルックだったが。ゾロは答えを聞くまで離さないと理解すると、ひどく言いづらそうにしながら。ぼそぼそ、と答えはじめる。

「・・・・だって、受け身だと捨てられてしまうって・・・・。」
「だから、何で受け身だと捨てられるなんて思ったんだよ。」
「・・・・だって、ウソップさんが・・・・。」
「・・・・ほう、ウソップが・・・・。」

あとで九割殺す。

ほぼ殺害決意だと、ウソップからツッコミされることをゾロが決めていると。

「好きに、好きだと伝え返さないと。行動に、行動で伝え返さないと。
相手に想われ続けないって、心変わりされるって、捨てられるって教えてくださって。
・・・・私、思い返すとゾロさんに好きとか、行動とか返してなかったから。だから・・・・。」

だから、捨てないでくださいいい!

ブルックは必死にゾロに掻きついて、そんな馬鹿なことを叫びだす。
捨てるなんてことはありえないのに「手を繋いだり、抱きしめたり、く、くちづけたり、好きだと躊躇わず言えるよう、ちゃんと返せるよう頑張りますから!」と。一生懸命に、分かっていない発言をする恋人に。

(・・・・ヤバイ、可愛い・・・・!)

ゾロは打ちのめされている。
大胆な行動にも心臓を乱されたが、それ以上に今の発言に心臓を乱されている。
だけど、そんなゾロに気づかないで懸命に言葉を尽くし、拙いくちづけを繰り返すブルックに愛しさしか覚えないなか。

(・・・・七割殺しで、いいか。)

こんな可愛いブルックを見れる原因になったウソップの処遇を見直したあと、ゾロは可愛いことしかしないブルックの唇を奪い返した。








・・・・ちなみに、このあと。ブルックと存分に過ごしたゾロに、強襲されたウソップは。

「釣った魚にエサをやらないとダメになるって一般論を言っただけだろ!?
 ちゃんと、お前らには関係ない一般論だって言ったぞ、おれええええええ!!」

さめざめ、と。包帯だらけの身体でもゾロにツッコミをいれていた。









(勘違いした恋人より、勘違いさせた仲間が悪いという理論に異議あり!!)










凄絶な勘違いをして大胆なことをしたブルックが、ゾロにもたらしたしあわせは、ウソップの尊い犠牲がありました(合掌)←待てそこ
いえ、最初は酒飲んだブルックが大胆なことをしでかしゾロをドギマギさせるというものを考えたのですが。
それじゃ、ありきたりかなと思考を捻ったことにより。おかしな着地をいたしましたv←反省して、そこ
お待たせいたしたものが、このような斜めな物ですみません!さがわ様!
書き直しは、いつでも受け付けておりますので!

この度は企画に参加してくださって、ありがとうございました!(お辞儀)







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