(剣士←音楽家)







「ブルック、一曲頼む!」
「喜んで!」

「ブルック、ちょっと手伝って!」
「分かりました!」

「ブルックー、一緒に遊ぼう!」
「いいですよ!」

『誰か』に声をかけてもらえるのが嬉しくて、『誰か』と行動できるのが楽しくて。ニコニコ、笑いながら頼みごとを断ることなく、誘いに頷くばかりのブルックだけれど。



「・・・・おい。ちょっと、いいか?」



例外として、声をかけた相手がゾロだった場合だけ。



「無理です、失礼します!」



深々とお辞儀してから、断りの言葉を告げ。全力で、目の前から逃亡するから。



「まだ、何も言ってねーだろ!!」



怒りの言葉を、いつだって聞く羽目になるけれど。・・・・本当に、ゾロの頼みだけは無理なのだ。
だって声をかけられただけで、嬉しすぎてしあわせすぎて倒れそうになるのだから、傍にいて何かを共にするなんてしてしまったら本当に嬉しすぎて本気でしあわせすぎて。倒れて動けなくなることは確定で確実だから。
だから、そんな無様な姿を好きな人の前で晒したくないブルックは全力でゾロから逃げだす。
そして逃げることで、不快な思いをいつだってさせているから(現にいつも怒りの言葉をもらうから)ゾロから嫌われているだろうという『憶測』も、逃げる足の速さを加速させる要素であり悪循環の要でもあると分かっているが。いまさら逃げることをやめることはできないし、仮に万が一、できたとしても傍にいれば必ず晒すのは無様な姿なのだから。



(もう、自分ではどうすることもできません!!)



嫌われたくないのに、嫌われる選択行動しかないなんて!!



心の中で諦め半分やけ半分で叫ぶブルックを、呆れたように見たり、笑って見送るお嬢さんがたの視線も。女性2人に給仕している料理長の、しょうがないものを見る視線も。そして、逃げ出す私の背中に突き刺さる怒りの視線も全部全部、無視して。
今日、も。ブルックは『好き』が大きすぎる、想い人に向き合うことなく逃げ出した。









(『好き』という気持ちが小さくなるまで、貴方から頂くであろう『嫌い』の言葉に耐えられる日まで。しらんぷり、して全力疾走!)















片恋お題見て「藻骨?」と呟いた末期者ですみません(本当にな!)
でも楽しいんです。すみません。

















おまけ(剣士→音楽家)





逃げ出した細すぎる背中を、強制的に見送ることになったゾロにかけられた言葉は。

「あーあ、今日も捕まえられなかったのね。早くしないと、自分のなかでケリつけてけじめつけられてしまったら、振られるわよ?」
「そうね。そういうところ、真面目だから。
 それに、彼。貴方から嫌われていると勘違いしているから、間違いなく謝罪とともに振るわね。」
「なっさけねーなー。甲斐性なし!」

容赦ない、現実実溢るるものばかりで。

「・・・・うるせえよ。」

腹がたつと同時に、焦る。
・・・・・ゾロが声をかけただけで逃げ出しているうちはまだ、いい。
それは、まだゾロに想いがある証明であるから。
だけど、声をかけてもブルックが逃げださなくなるときは。・・・・・終わり、だろう。
だから、そんなときを来させないためにも。

「今日は、絶対、捕まえる。」

物騒なほど、低い声。ものものしい雰囲気に。
煽った面々は、「ようやく動くか」と安堵しながらも。どう、楽観的に見ても無事にすむわけがないだろうから意地悪そうに楽しそうに、見物席から逃げだした音楽家に黙祷を捧げる。









(だって、『しあわせ』になれるんだから!そこに至るまでの苦難は、しらんぷり!!)











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