(ヨーキ×ブルック)




注意・このssは、シャム猫設定で書いています。







・・・・ブルックは、目の前にいる男の言うことを理解できないことが多い。
いまだって、そうだ。

「もっと俺に頼って、甘えていいんだぞ?」

いきなり、そんなことを言われても。ヨーキに頼らなければならない事態は今のところ訪れていないし、甘えなければならない理由も今のところない。
だから。

「頼る必要も、甘える理由もないのに。何故、そんなことを言うのですか?」

そんなことを言うヨーキを、ブルックは理解できないから問う。
しかし、その返答に眉根を寄せて。

「んなの恋人だからに、決まってんだろ?
 だから、お前に頼ってもらいてえし、甘えてほしいんだよ。」

ふくれた頬で、ヨーキは言い返す。
けれど、やっぱりブルックはヨーキの言い分を理解できない。
「恋人だから」と、ヨーキは言うが。別にブルックは、恋人であるヨーキに頼ってほしいとか、甘えてほしいとか思わない。
そして恋人であるヨーキに、頼りたいとも甘えたいとも思わない。



・・・・・ヨーキの傍に、居れるだけで。もう充分だとは、思うけれど。



だから、「恋人だから」してほしいというものに頷くことをしない。
しかし、「恋人だから」と言ってもらえることは嬉しいことだから。

「・・・・・・命の危機が訪れたときには、貴方に頼ります。
 そして甘えは、やり方が分からないので他の人を当たってください。」

ブルックなりに頑張って考えた、否定でない言葉を返した。
しかし。

「・・・・・・・・。」

それに思いきり、不満そうな顔をして。金茶の髪を苛ただしげに掻き廻して。



「・・・・・お前の、そういうところ。好きじゃねえわ。」



ヨーキは、ブルックが死にたくなることを口にする。
その一言で青ざめるを通り越して、死人のように白くなったブルックの頬に手を添えて。

「・・・・・いちいち理屈なんざ、つけなくてもいいから。
 俺に頼って、甘えろよ。」

力をなくした細すぎる身体に、縋るように抱きつき。切なげに歪んだ顔で、ヨーキはブルックに乞う。
しかし、さきほどの一言で茫然自失しているブルックは。返事も碌に出来ず、ただただ強張っているばかりであった。

「・・・・・・・・・っ・・・・・。」

けれど抱きしめてくれる腕が、触れあっている身体があたたかいから。そのぬくもりによって徐々にブルックは意識を取り戻すが、けれどヨーキにさきほど言われた。

『・・・・・お前の、そういうところ。好きじゃねえわ。』

その一言が、ブルックを縛り。動くことが、ままならない。



・・・・・だって好きじゃないということは、嫌いということではないか!



ヨーキの一言によって、自分は嫌われたという結論を出してしまったブルックはピクリとも動くことが出来ず。ただ、ただ固まり続ける。
そんなブルックを訝しんだヨーキが、どうしたんだと顔を覗き込んでくるが。

「・・・・・・・・・・!」

嫌われてしまったと思っているブルックは、恐ろしくてヨーキと目を合わせようとはしない。
それに、むっとした表情をして。ブルックと、なんとかヨーキは目を合わせようとするが。
頑なにブルックは、ヨーキと目を合わせない。
その態度に、不満そうな顔をするヨーキに。またも嫌いと言われるかと、ビクリと身体を竦ませるブルックに。

「・・・・んな、怯えるなよ。」

苦しそうにヨーキは顔を歪め、ブルックと同じように傷ついた色の瞳をする。
そして、腕のなかにいるブルックに。

「・・・・好きなやつに、怯えられるのは辛い。」

ヨーキは、そう告げ。ブルックを抱きしめる腕を離そうとする。
しかし、ヨーキから『好きなやつ』だと言われたことに。弾かれたように、ブルックは顔をあげて。

「は、はなれ、ないで!」

慌てて、離れていこうとするヨーキの腕を掴み。好きなら傍にいるものだとヨーキから学んだブルックは、まだ好きでいてくれるなら離れないでと、必死に叫ぶ。
その叫びに、虚をつかれた表情をするも。一瞬後には、ヨーキは嬉しそうに破顔して。

「ブルックーーーー!!」

彼女の望む通りに離れず、抱きしめた。
そうして「大好きだぞ」と、いつものように叫ぶヨーキに。良かった、まだ自分を好きでいてくれると実感できたブルックは。

「・・・・・・。」

抱きしめてくるヨーキの首筋に、ひそりと頭を寄せて。触れあうあたたかさを失わなかったことに、安堵した。







(完全には分かりあえないから、2人でいることは傷つけあうこともあるけれど。それでも、2人でいることはしあわせなのです。)









お題を意識しすぎたからか、切ない感じになったなあ(汗)
いや、でも最後は仲直り(?)したから、まあ良しとしよう!←開き直りやがった!?







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