(音楽家←剣士)
名を呼ばれるだけで緊張する、なんて。全く自分の柄ではないとゾロは想うが。
「ゾロさん!」
それは楽しそうに、嬉しそうに。己の名を呼んでくる、ブルックが悪いと想う。
「なんだよ。」
だって言葉少なく、ぶっきらぼうに応えても。呼べば応える相手がいることを、本当に楽しそうに嬉しそうに幸せそうに笑う姿がゾロの心臓に負荷を与え、緊張させるのだからブルックが悪いと想うのだ。
だけど、その悪い元凶はちっともそんなゾロのことには気づかずに。
「・・・・ゾロさん!」
噛みしめるように、確かめるように。独りでないことを認識したがって、また己の名を呼んでくるから。
「・・・・・・なんだよ。」
無視なんて出来るはずもなく、きちんと応える。
そうして、応えたあとに必ず齎されるブルックの笑みに。益々ゾロの心臓は負荷を覚え、緊張してくるのだが。
「・・・・・・・・ゾロさん!」
だけど、いまだ独りであった頃の恐怖に囚われている声を無碍になんて出来るはずもないゾロは。
「・・・・・・・・・・なんだよ。」
言葉少なく、ぶっきらぼうでも。確かに、あたたかさを込めた声でブルックに応え。
「!?」
傍にいることを、手っ取り早く分からせてやるために。手を握ってやったあと。
「・・・・・・・・・・ブルック。」
ここに居るぞ、と。ここで呼んでいるぞ、と伝えるために名を呼んでやる。
それに始め、呆けたように固まっていたブルックだったが。
「は、はい、はい!ゾロ、さん!!」
ゾロの意図を理解した途端、大きな声で。己の傍にいる声に、泣きそうに震える声で応えたあと。
とても、とても綺麗な笑顔を浮かべていた。
(・・・・・もう独りじゃない、と。君が、笑う顔に恋している。)
(片)恋、大好き!←やかましい
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