(ヨーキ×ブルック)









訪れた島は、いまは無人の有り様で。かつては栄えたであろう町の面影が残るだけの、廃墟ばかりである。
しかも、この島はたいして大きくなく初日で探検しつくし、また人がいないために遊びにくりだすことも出来ないために。
各自、それぞれが次の島のログが溜まるまでのあと二日間、暇潰しを兼ねた好きなことをし始めた。
ある者は楽器の手入れ、ある者は歌の練習、ある者は剣の修行。そして、ブルックとヨーキは散歩である。

・・・・・・・麗らかな日差しのした。朽ちた佇まいの、瓦礫になりかけた並木道を目的もなく2人、言葉もなく歩く。

賑やかなやりとりも、大好きな音楽もない無音のなかだけど。互いに繋いだ手のあたたかさのみを楽しむというのも、悪くない時間だからとゆったり歩いていると突然ヨーキが歩く歩調を変えた。
早足になるヨーキに付いていくために、ブルックの足も同じ歩調になるが。一体どうしたのか分からないままに、ブルックがヨーキと共に辿り着いた先は。
未だ朽ち果てることなく形を残している、高く高くそびえる塔のような教会であった。

「ここが、どうかしましたか?」

初日に探検した時には、特に何もなかったはずだと訝しむブルックに。ただ笑うだけで答えず、ヨーキは中に入っていく。
そこは武骨な石造りでできていたために風化を免れてはいるがあちこちに傷みができ、また全体的に薄汚れていた。だが神を模した偶像だけは、かろうじて汚れることなく聖廉としてあった。
混沌とした陰陽交ざった場所に、全く構う事無くヨーキはブルックを伴って突き進み。祭壇前で、ようやく足を止める。
そこに立つヨーキは、いやに照れくさそうに。言いづらそうに、口籠もるから。

「・・・・何ですか?」

何が話したいのかさっぱり分からないブルックは、促すように問う。
そうすれば、覚悟を決めた目をブルックに向けたヨーキは。

 

「・・・・音楽に誓って、俺はお前を愛している。」

 

愛の告白、をしてきたので。喜ぶよりも驚くよりも嬉しくなるよりも照れるよりも先に、ブルックは。

「・・・・いきなり、何ですか?」

呆けてしまった。そんなブルックの態度に、気まずそうに。

「・・・・言ったこと、なかっただろう。だから、まあ、けじめを兼ねて言ったんだけどよ。」

歓びやしねえし、と。ヨーキは拗ねた。
しかし、そんなことを言われても。突然すぎたし、予想外すぎたので、どう応えればいいのかブルックは戸惑う。

・・・・大体、『なんとなく』で今まで来たのだ。

なんとなく、仲間以上に気になって。なんとなく傍に多くいはじめて、なんとなく何度も他愛無い触れ合いをしはじめて。そうして、確かな言葉もないままに、抱かれたのだから。
・・・・とりあえずヨーキが自分に仲間以上の好意を持っているとは、分かってはいたが、それだけで。確たる関係ではない、曖昧なままで今まで来たのに。
いま、この時。与えられた愛の言葉に、拗ねてこちらを見ないヨーキの耳が赤くなっている姿に、繋いだ手のあまりの強さに、ブルックは。
恥ずかしがって移動しようとするヨーキを止めて。

 

「・・・・私も、貴方を愛してますよ。」

 

愛の言葉を自身もはじめて口にして、けじめを。『なんとなく』という曖昧を、ヨーキと同じように亡くすために告げた。
そのブルックの言葉を聞き。弾かれたように振り返ったヨーキの顔は、多彩な変化を見せた。
思い切り驚いて呆けた顔をしていたかと思えば、徐々に嬉しさを押さえきれない笑い顔になり、そして照れながらも惚けた顔になって。ブルックを、力の限り抱きしめた。
余りの容赦ない腕の力に、思わず文句を言おうとしたブルックだけど。噛み付くようにキスされ押し倒されたことで、それが叶わないためにせめてもの抗議として男の背中にツメをたてた。

 





 


(・・・・・今日。『恋人』に、なりました。)
 












頑張って大人風味(?)に仕上げました!!
でも、なんか尻切れトンボっぽいですが、これが精一杯なんで許してください(土下座)








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