(ヨーキ×ブルック←ゾロ)














ログを辿って見えてきた島には、割りと大きな町があった。そして、そこには。

「・・・・・・、教会?」

一際目立つように、町の中心に建てられている『それ』に目を瞠って。ブルックは、茫然と呟く。

「え、そうなの?よく分かるわね、ブルック。」

確かにナミの言う通り。一目で、その建物が何かを分かるのは難しかった。
武骨な石造りでできている細長い建物には窓もなく、装飾もなく。ただ、天を目指すかのように高く高くそびえていたのだから。

「・・・・・・昔。一度だけ、訪れたことがありますので。」

答えるブルックの声が固かったので、訝しんだナミが問う前に。

「一番乗りいいいい!!!!!」

ルフィが港に騒がしく降りたったことで、そちらに注意を向け。

「こら!まだ、船番決めていないでしょう!?」

怒りながら連れ戻しに行ったことで、そこで一旦会話は終わり。そして騒動が続いたために、問う声はなかった。

・・・・・・この島でのログが溜まるまでの期間は、1週間。それまで各自、船番を交代しながら好きに楽しむことになった。
そして最初の船番は、珍しいことにウソップとフランキーだった。
いつもならブルックが率先して船番を引き受けて、そのまま船に居着くことが普通(その度に、他のクルーたちから船から引っ張り出されるのが常)なのだが。
だが、ブルックが珍しく自分から島に行こうとする姿に「いいことだ」と喜び笑うクルーたちは、だからこそ見逃していた。
固く硬く堅く握りしめられていた、ブルックの拳を。ただ一人を除いて、気付くことはなかった。














サニー号から降りて、駆けるようにしてブルックが辿りついた教会内は壁にかけられたロウソクのお陰で、薄暗くとも厳かな明るい空気を漂わせ。
人の手が行き届いているために、全てが清潔で聖廉であったが。
それ以外は『あの時』。訪れた場所と、何一つして変わらなかった。
だから。ブルックは、ポツリ、と一言。

「・・・・・懐かしい、ですね。」

落としたあとは。ひどく愛おしそうに大切そうに、中を見渡しながら進み。
そして奥にある祭壇に辿りついたブルックは。どこか遠くを見るように、想うように。また、ポツリ、と。

「・・・・・懐かしい、ですね。」

落とし。それきり、独り佇み、黙り込む姿に。

「・・・・何が懐かしいんだよ。」

昔の感傷に浸っているのだろう時間を妨げるのは、無粋だとは分かっていても。様子のおかしいことに気付いて後を追ってきたゾロは、あえて声をかける。
そうすれば、酷く酷く、ひび割れた声で。



「・・・・・・・あの人に。『あの時』愛を告白されたことが、懐かしいのです。」



とても嬉しげに楽しげに切なげに、心を込めて告げてくるから。

「・・・・・・。そうかよ。」

むすり、と。面白くないと疼く感情のまま、普段より一層低い声で応じるゾロに。

「ヨホホ。惚気てしまって、ごめんなさい。」

おどけて謝るブルックだったが。

「・・・・・・でも。本当に、懐かしいのです。」

そうして、また黙り込むブルックを。そっとしておくのが一番いいと、優しい愛しい記憶の追悼を邪魔するのはいけないと分かっているはずのゾロ、の手は。

「え?え??」

ブルックの手を掴み。教会内部から引きずりだそうとしている。

「あ、あの。ゾロさん、私、まだ、ここにいたいのですが?」

困惑しながらも、意見を言いながらも。ゾロの手を振りほどかないままでいる、ブルックの優しさに付け込んで。

「・・・・・俺、は。ここに、いたくない。」

外へ、出る。
そうすれば、諦めたように大人しく自分についてくるブルックに安心するゾロだったが。しきりに後ろを、教会を気にしてついてくるブルックを見て。

(・・・・・俺なら。懐かしい、なんて言わせやしないのに。)

歯がゆく、思う。
けれど愛しいヒトの心は、まだ。あの教会で、愛を告白してきた輩のものだから。
見るな気にするな、と言える立場をそのために得ていないゾロは。口を閉じたままブルックの手を決して離さず、教会からブルックを遠ざけていくことしかできなかった。








(ここにいる俺なら、お前に触れることができるのに、傍に在ることもできるのに。なのにお前が望むのは、もう触れることができない、傍に在ることができない『誰か』。)











こちらの作は、布骨の「恋人」とリンクしております。
また、ものすごくキリがいいのか悪いのか分からないところで終わっておりますが(爆)途中、放棄したコピ本のもったいない精神から手直したブツなんで、すみませんがここまでしかないです。(おい)
・・・・・すみませんでした(逃走)










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