(剣士→音楽家)








凍える吐息。真白に染まる世界。突き刺す痛みに。



「寒さが、骨身にしみます。・・・・骨だけに。」



ピクリとも動くことができず。かすかな声で呻くブルックに。

「・・・・だったら、おとなしく待ってろよ。」

ありったけの毛布をかき集めてきたゾロが、呆れたように声をかける。
その声に、ビクリ、と反応を返し。往生際悪く、また逃げ出そうと(寒さのせいでほとんど動けないために、歩く代わりにコロコロ転がって移動しようと)する音楽家の首根っこを捕まえて。
ようやく捕獲完了した身体に、ゾロは持ってきた毛布全てを巻き付けてから。



後ろから、彼を、抱きしめた。



そうすれば、カチン、と。
固まり、動くことがなくなったブルックの身体に、顔を埋めたゾロは声をたてて笑い。

「・・・・慣れろよ。」

ブルックには、とても無理で無茶な要求を、言ってのけるから。

「無理、無理無理無理無理、ですから!ですので、放してください!でないと、私の心臓がもちませんから!!・・・・あ、私、心臓がなかった!!」

必死で訴えてみるのだが、つい。いつものように、自分の身体に対してのツッコミをいれてしまったせいで。

「じゃ、問題ないな。」

あっさり、終わらされてしまい。しかも、もう話は終わったとばかりにゾロはそのまま目を瞑ってしまった。
・・・・ブルックを、腕の中に収めたままで。

「ちょっ!寝ないでくださいよ、ゾロさん!!」

これに慌てるのは、現状に納得してないブルックだが。いくら大声を出しても目を開けてはもらえず、いくら力を込めてもその腕の中から抜け出せることもできず。
そのため長い時間抵抗をしたが、結局、現状を諦めるしかなかった。

「・・・・・ああ、なんでこんなことになったんでしょう?」

さめざめ、と。思わず零す言の葉と同時に、思いだすのは一昨日の自身の失態。



・・・・・寒さのあまり、一日起き上がることができずにいたのだ。



霧の海で彷徨っていたころにも、何度か寒さのせいで動きが鈍くなることはあったけれど、今回は冬島が近いせいか寒さが半端なく酷くて。この『骨』だけの身体は、耐えることができなかったのだ。

・・・・そんな私を診察してくれた、船医さん曰く。

身体を暑さ・寒さから守る身体の部位が欠落している私の身体は、人よりも暑さ・寒さに弱いうえ、身体を自発的に温めたり冷やしたりして体温を保とうとする神経も欠落しているために、防衛機能が働かないから、『凍死』『焼死』になりやすいそうで。
なので、寒くなったら暖をとること・暑くなったら冷をとることを怠らないようキツク、キツク言い渡されたその言葉を。しあわせ、だと。心配されることを、ありがたい、と。言い切れるけれど。
しかし、そのチョッパーの言葉を聞いたゾロのこの行動には、正直、困るが。

(・・・・・でも。私が倒れていた、あのとき。一番、心配してくれたのはゾロさんなんですよね・・・・・・。)

だからこその、反動だろうか。
けれど気遣いゆえのことだとは、分かっていてもいたたまれない。
そして周りからのもの言いたげな視線も、本当にいたたまれない。
だから、「毛布だけでいい」と何度もブルックは告げているのだが。いまだ、ゾロからは了承の返事は貰えないでいる。



「・・・・・・・・ああ、寒さに弱い私が恨めしい。」



早く寒さよ、終われ。
そんな音楽家の願いとは真逆の願いを持つ者の腕のなかにいることに気付かないまま、ただ嘆く彼は。聖なるこの日に『2人きり』の意味も、きっと気付けない。










(傍から見たら、恋人同士!)













間  に  合  っ  た。
隠しのssばかり頑張っていたから、クリスマスを普通に忘れてスルーするところだった(汗)
あ、ブルックの身体のことは私的捏造なので、本気にしないでください。
クリスマスらしく、甘くしてみてみようと頑張った結果がこのザマです。・・・・甘い話がかけるようになりたいものです。(遠い目)







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