殺伐としたうえに、人死に描写が出ておりますのでご注意を!






















見通しの悪い、お世辞にもいい道とは言い難い路地の通りは。暗い空気、冥い音が満ち満ちていた。
だけど、それ、が。気にいらないとばかりに、盛大に顔を顰めてヨーキは。


「・・・・・もう、やめろ。ブルック。」


それらを生み出している、原因たる人物に制止の声をかけるが。

「?やめる必要が、どこにあります。」

不思議そうに問いかえすブルックの声に、重なるように。グチャリ、と鈍く湿った音がブルックの足下から響く。

「貴方の命を狙った、『敵』にかける情けなぞ。必要、ないでしょう?」

言い切る言葉の合間にすら、止まることのない蹴りによる暴力は。既に動くことも悲鳴さえもあげることができないほどに痛めつけられた男を、さらに無情に痛めつけ続ける。
だけど、そんなブルックの姿に。

「そこまでしなくても、いいだろうが。」

見てて、胸クソ悪い。

ヨーキは顔をしかめ、嫌悪が滲んだ声音を吐きだす。それを見聞きし、ようやくブルックの男への暴力は止んだ。・・・・が。
止めた瞬間。ブルックは己の血と涙と汚物に塗れ、地面に倒れこんでいる男の首を。躊躇うことなく、剣で刎ねた。
その事に、ヨーキが言葉を発する前に。淡々と、ブルックは。



「正面から挑んでこず、影から不意をつき毒矢を貴方に射ろうとした愚か者には。ふさわしい、末路でしょう。」



断罪、する。

「・・・・・・・。」

そんなブルックを、苦々しく見やるヨーキの沈黙を。冷淡に、ブルックは見返し。

「・・・・気に入りませんか?
 ・・・・そうでしょうね。敵であろうとも、人間を嬲り、殺すなんて貴方の性には合わないでしょうね。
 ・・・・・・・でも。」

芯、から。冷たい声で笑みで、ブルックは。



「見せしめ、としては。効果的です。」



非道、なことを告白する。
そうして、ゆうるりと。陰からこの光景を見ている町の者たちや、隠れて姿を現さない、さきほど屍にした男の仲間の賞金稼ぎたちを睥睨し。



「・・・・・『キャラコのヨーキ』に、『ルンバー海賊団』に、このような真似をすれば!どれだけ悲惨な末路を辿るか、これでよく判ったでしょう!!」



教えこむように、高らかに告げるブルックの手を荒々しく取って。ヨーキは、その場から連れ出す。
まるで逃げ出すかのような態度のヨーキに、ブルックは首を傾げながら。

「この見せしめで。
 貴方に対して、影から不意打ちする者は減るでしょう?
 貴方に対して、毒を使う者は減るでしょう?
 それは、とてもとてもとても良いことなのに。
 ・・・・・・どうして、嫌悪。するんですか?」

暗殺、毒殺ほど防ぎ難いものはないのだから。これ、でおおまかでも防げるならいいじゃないですか。
 
かつて要人を護衛する側にいた人間の、身にしみた経験に基づく言葉に。けれど、ヨーキは何も返さない。
そうして無言のまま、不機嫌に突き進むヨーキの背中に。悪いことをしていないのに、なんだか責められているような気がひしひしとしてきたブルックは、色々言い募るが。
言葉は結局返ってこないうえ、ブルックを掴むヨーキの手の力は、ブルックが言葉を発する度に強くなるばかりで痛いだけだから。
ひどく不貞腐れたように、ひどくつまらなさそうにポツリと。



「・・・・・・綺麗な、やりかた。できないって言ったじゃないですか、私。」



零すブルックの言葉に。ようやく、ヨーキの足は止まる。
そして、ようやく返ってきたヨーキの反応に後押しされたブルックは。

「・・・・・・綺麗なやりかたでは、何一つとして守れない。それを軍人時代に骨身で想い知った私は、効果的なら汚いことも穢れたことも厭わず実行します。
 それで護りたい人を守りきれるなら、躊躇わないし構いません。
 ・・・・・・・・・・・そうやって、これまで生きてきたんです。そうして、これからもそうやって生きていく私に。物好きにも手を伸ばしてきた貴方に、私は散々諭したはずです。
 『誇り』『仁義』『正々堂々』、なんてやりかた。何一つできやしないから、私を求めるのはやめなさいと言ったのに。なのに、全然聞き入れずに、私を仲間に迎え入れたのに。
 いまさら、それを後悔されても。いまさら、それを重荷に感じられても。わたし、は。」

乾いた目で、空っぽな声で、困り果てた顔で告げるのを。

「・・・・・・・・・誰が、後悔しているって?」

遮ったのは目の前の男。低い、低い獰猛な声で。

「俺は、俺が求めたものを重荷に思ったことなんざ一度もねえよ。」

ブルックの言い分を、真っ向から否定する。

「・・・・・・確かに。俺はお前の『やりかた』は、好きじゃねえ。だけど、勘違いするなよ。
 お前が俺を守ろうとして行動した『想い』を、嫌っているんじゃねえんだ。むしろ、それは好きだ。
 そして、俺は。『お前』を好きだから、俺のものにしたんだ。」

そこは、きちんと覚えておけ。

射殺しそうなほどに強すぎる視線、さっきよりも強く強く掴んでくる大きなゴツイ手、怒りを隠しもしない端正な顔は、痛いほどの圧迫感があるというのに。そして、優しさなぞ微塵も感じれないというのに。
なのに、ブルックの胸にいま満ちているのは甘ったるいほどの愛しさで。そして、それにより乾いた目も空っぽな声も潤わされていき。

「・・・・はい。覚えておきます。」

しあわせに蕩けた目に、嬉しさに彩られた声に、満面の笑顔に変化したブルックに満足そうにヨーキは頷き。

「・・・・・だが、少しは『やりかた』を控えろよ。」

釘をさす。
それに「頑張ります」と答え、コクコクと何度も頷き返すブルックの姿を見て。やっと、ヨーキは仕方なさそうに笑って。
周りからの恐怖の視線、纏った血と死の匂いを気にもせずに先ほどより緩やかな、穏やかな空気で。2人、笑いあっていた。










(私たちが、間違っている?汚れている?穢れている?・・・・・・・それが、どうした!俺たちは、海賊なんだ!!)









 

・・・・・・・・・うん。実際、こんな真似しないでしょうけどね。だって『泣く子も笑わす』ルンバーだもん。←なら、書くなよ。
だけど、生身ブルックって絶対Sだと思(殴)そして、それを調教して治したのが布船長だと思(撲殺)
・・・・・・・・・せっかく頂いたリクが、暗く病んだ作で本当すみません。
このような作ですが、リクをくださった由佳ちゃんマン様のみ、この話をお持ち帰り可です。(返品も可です)
リク、ありがとうございました!!







戻る