(鷹の目×幽姫)
血すら出ていない、かすり傷だ。
痛みなんてないに等しい、誰も気に掛けないような。本当に、ちょっとしたかすり傷だ。
なのにミホークは、そのかすり傷を見た瞬間。ペローナの腕を引っ張り、治療薬がある場所まで連れていき。
「・・・・。」
ペローナを椅子に座らせ、無言で向かい合って手当てした。
その行動に対し、薬が勿体ない、とか。これがゾロなら無視しただろうお前、とか。
ペローナは色々言いたいことがあったけれど、真剣に。
「これで大丈夫だ。」
かすり傷なのに、そんなことを真面目に言う男に。
「・・・・ありがとう。」
真っ赤になった顔を俯かせ、礼しか言えなかった。
・・・・こんな、誰も気に掛けない傷を。痛みなんてない傷を、わざわざ手当てしてくれる行動に込められているミホークの感情が分からないほど鈍くないペローナは。
「・・・・。」
普段のように振る舞うことは出来ず、もじもじとし。チラチラと、ミホークを伺い。
「・・・・あ、の。そ、の・・・・。
これからは、き、気をつける。」
素直に、意地を張らない言葉を紡ぐ。
そのペローナの素直さに、珍しいと目を僅かに見張ったあと。ミホークも、その素直さに釣られたかのように。
「ああ、そうしてくれ。」
珍しくも笑う、から。
「!!?!」
驚いたペローナが思い切り、飛び跳ねたため。
「!!!きゃっ!!!?」
椅子から落ち、床に落ちかける。
しかし、ペローナが床に落ちることはなかった。
いち早く反応したミホークが、ペローナを抱き留めたために。床に身体を打ちつけることはなかったが。
「〜〜〜!?!」
近すぎる距離に、ペローナはパニック状態に陥ることとなる。
だけど、それに気づかないミホークは。気をつけると言ったそばから、怪我をしそうになったペローナに呆れた視線を投げ付けながら。
「・・・何をやっているんだ、お前は。」
呆れたと言わんばかりに、言うが。ペローナが椅子から落ちかけた原因が己にあるとは欠片も思わず、そそっかしい娘だと認識を新たにしていた。
けれど、いつもなら「うるさい」と噛みついてくるはずが何も言わずオロオロとしている彼女の様子に。珍しいなと、またミホークは笑うから。
「〜〜〜〜〜!!!」
ぺローナが、普段の調子を取り戻せるはずもなく。ただ、ただ顔を赤にして男の腕に素直に抱きしめられるだけであった。
(・・・・め、滅多に見せない、その笑顔は卑怯だぞ!!)
頑張って甘くしてみました!当社比で(爆)
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