半月の航海の後、モビーディック号は1週間をとある島で休んだ。船員達も休暇を満喫し、食料などを積み込んで、また次の航海へ出る。
ゆったりと過ごした白ひげも、ホテルを出て船へ向かうところだ。彼の荷物を持った船員を引き連れ、通り道ついでに市場を横切っていたところ、ふとある物を見つけた。
果物を多く取り扱う露店だった。夏島であるため、甘いフルーツが所狭しと並んでいる。
その中で1個だけ置かれていた果物。見た目は赤く熟したおいしそうな実で、マンゴーに似ているが、かなり大きい。それに白ひげは立ち止まった。

「おい、これをくれ」

白ひげを知らぬ者はいない。露店のオヤジは恐縮しまくり、好きなだけ持っていってくださいと袋へ他の果物まで入れてしまった。
白ひげは苦笑し、その価格の倍の金額をぽんと払って、袋を受け取った。








船が出港する。白ひげはいつもの甲板の席に陣取り、何かをじっと見ている。
その視線の先には、白ひげ海賊団1番隊隊長がいた。
ある程度安定した航路を取れるまでの間は忙しい。航海士からの情報を得て、的確な指示を飛ばす。確かに船長は白ひげなのだが、この本船であるモビーディックを実質的に動かしているのは、この1番隊隊長だ。

「東からの風を受けろ。10時の方向だ。ぼやぼやすんない!」
「「「おう!!」」」

よく通る声が広い甲板に響き渡る。その姿を白ひげは満足そうに見ていた。
通り名は不死鳥のマルコ。20年ほども白ひげ海賊団にいる古参の一人であり、実質上のナンバー2。自他共に認める白ひげの片腕であり、白ひげの私生活でも恋人である。
すでにその関係は公認になっており、誰も文句は言わないが、そういったそぶりを一切マルコが見せないのは、けして私情を挟まず、誰より自分に厳しいからだ。
抜けるような青空の下、帆が大きく膨らんで、海原を一直線に進む。ログポースが指し示す方角を捉えて、マルコは一つうなずき、後を操舵手に任せた。
それぞれの持ち場から隊長らが集まってくる。別にそこにいてもいいのだが、船が順調に進めば、後は船員らがきちんと動く。ゆえに暇になるので、大抵は白ひげの元にやってくるのだ。
それを長年続けているので、船員らも慣れている。
すでにシフトに関しては休暇前に通達されているので、混乱も無い。それぞれの時間帯に合わせて動く船員らを確認すると、隊長らは談笑し始める。主に休みの間の行動についてだ。
だがその中で、マルコは軽く首を回して音を鳴らすと、早々に自室に戻ってしまう。航海が始まれば、島で仕入れた物資の領収書が集まってくる。それらの管理もマルコがやっていた。
千人規模の会社の庶務と経理と人事を一手に引き受けているようなものである。空き時間などほとんど無い。

(いい加減、あいつにゃ助手がいるなあ)

白ひげは他人に気づかれない程度の小さいため息をつく。
誰より遅くまで船に残り、誰より早く船に戻ってくるのはマルコだ。1週間の休暇と言っても、マルコだけはせいぜい真ん中の2日間程度しか休めない。
他の隊長らが自分の隊は見てくれるが、それでもやはり全体の指揮は必要であり、そうなるとやはりマルコの役割になってしまう。
そのようやく取れる2日間の休みを、マルコは白ひげの元で過ごす。疲れきった渡り鳥がやっと羽を休められるような、本当に休むための時間だった。日々の睡眠不足を取り戻すように、半日ほども寝ている。
いずれ身体を壊しそうで、白ひげは心配しているのだが、マルコは大丈夫だと言い続けている。

「……こうして、オヤジの傍にいられたら、元気になるよい」

そう小さくつぶやいて、白ひげの腕の中で丸くなる恋人に、むしろ白ひげの方が切ない。
もちろん絶えずそんなに忙しいわけではない。航海中は多少の書類仕事はあっても、すぐに終わらせてしまう。だから島に寄る前後が山なのだが、その処理量が膨大なのだ。
先ほども、マルコの目の下に薄くくまがあった。毎度のことだと本人は言うが、一番の権力者である白ひげ自身が、マルコをそこから外せないのがつらかった。
その気持ちが顔に出ていたのか。ジョズとビスタが白ひげの元に来て、どうしたのかと言ってきた。二人ともマルコに負けないほどの古参である。

「……あいつが心配でなあ」
「あー……」

白ひげが「あいつ」と呼ぶ時はマルコの事である。逆にマルコが「あの人」と呼ぶのは白ひげだ。

「そろそろ無理もきかんトシだろう」
「じき40じゃないか?」

二人はマルコより少し年上だ。故に加齢による体力の低下については理解がある。表立って衰えているわけではないが、やはり本人にしかわからない変化はあるのだ。
以前、過労で倒れた時に、かなり仕事は減らさせた。だが、それでも残った分量は多く、さらに人数も領海も増えたため、どうしてもそれ以上仕事を他人に割り振れない。

「かと言って、あいつほどできる奴はおらんしなあ」
「我々ではな……」

戦場では無双の力を誇れても、頭を使う仕事は不向きな者ばかり。マルコが白ひげ海賊団にいる事の方が奇跡だと思う。

「仕事仕事で、飲む量も減らしたな」

嘆息するジョズに、ビスタがうなずく。

「元々強くはあったが、他が酔いつぶれた時のためにだろうな、セーブするようになった。ここ数年、マルコが崩れたところを見ていないな」

やはりかと白ひげは思った。自分が気づいていた事は間違いではなかった。

「たまにはマルコに好きなだけ飲ませてやりたいな」
「酒、好きだからな」

それを聞き、白ひげは二人を手招きして近づかせ、声を低める。

「ちと考えている事があってな。お前たち、とりよいの実は知っているだろう」
「ああ、知っている」
「なぜか鳥だけが酔っ払う実だな」
「それを、前の島で手に入れた」
「へえ!」

二人はにやっと笑った。
それこそもう20年近く前。偶然手に入れたとりよいの実で、マルコが酔っ払った事がある。まさかトリトリの実の能力者まで影響があるとは知らず、大騒ぎする不死鳥を抑えるのにずいぶん苦労した。
この事を覚えているのは、それこそ古参の者ばかりだ。隊長の中では、他に知っているのはサッチくらいだろう。ちなみに本人はまったく覚えていない。

「羽目を外させてやりたくてなあ」
「いいかもな。そんなにたくさんでなけりゃあ、昔みたいに暴れないだろうし」
「あの時は丸ごと1個食ったからな。ああ、それならサッチも呼ぼう。デザートってことで用意させて、オヤジに出すつもりでマルコに食わせるのはどうだろうな」
「よし、サッチを呼べ」

そうして連れてこられた4番隊隊長でありマルコの親友であるサッチは、白ひげの意向を聞いてにやっと笑った。

「了解。喜んで協力するぜ」

親友と言っても、どちらかと言えば悪友に近い男である。マルコが素でどついたりつっこんだりするのはサッチだけだ。それだけ心を許しているとも言える。そしてこの男もやはりマルコの身体を心配していた。

「けど、いつやるよ。今日までは書類仕事で閉じこもってるだろ。いつもなら部屋出てくるのは明日だぜ」

深夜まで書類を処理して、翌日の日中まで爆睡するのが常だ。多少落ち着いてからの方がいいというのが親友の意見である。

「実がどれだけもつかな。もう完熟?」

白ひげは少し考え、連れ立って船長室へ入った。机の上に置いていたとりよいの実をサッチに渡す。

「……3日がせいぜいだな。それ以上だと実がぐずぐずになって、オヤジに食わせる名目としちゃつらくなる」
「あさっての夜がぎりぎりかな」
「そうだな」

日程が決まった。

「まあ、暴れたらおれが抑えよう」

ジョズが請け負う。ビスタも手伝うと約束した。
そうして、まだ仕事に追われているマルコに内緒で、計画はこっそりと進められる事になった。











ようやく仕事から解放され、しっかりと睡眠もとったマルコは、気分よく部屋から出てきた。陽光の下、思いっきり背伸びをして、こわばった筋肉をほぐす。

「おはようございます、マルコ隊長」
「おつかれさまです、隊長」
「おう」

マルコの行動を知っている1番隊の面々がやってきては挨拶する。荒くれ者ばかりの海賊団にあって、マルコの統率以下海軍にも負けない規律を誇る精鋭部隊だが、だからこそマルコは慕われている。

「メシ、どうしますか。コックに頼んで、作ってもらってたんですけど」
「おお、そりゃ気がきくねい」

その隊員はうれしそうに笑った。やはり、ちょっとした事でも褒められるとうれしい。
食堂へ行くと、料理長がマルコへいくつも皿を出した。忙しい時はろくに食べられないマルコのために特別に用意したものだ。

「お、ワイン煮」
「好きだろ、頬肉。一番がんばってんだ。腹いっぱい食ってくれ」
「いつもすまないねい」

子牛の頬肉の赤ワイン煮、真鯛のカルパッチョ、ずんだ豆のポタージュ、温野菜のサラダ、ガーリックトースト。仕事明けの1番隊隊長のための特別メニューだ。
余談だが、数年後に新たに就任した2番隊隊長がこれをうらやましがるのは、まだ先の話である。
手が空いている1番隊の隊員が話し相手だ。マルコが篭っていた間の情報を聞くためだが、大抵は平穏で、もっぱら世間話である。
隊員らも普段はあまり話せない自隊の隊長と話したくて、積極的にやってきては馬鹿話に笑っている。こういう時はマルコも穏やかなので、大笑いはせずとも、笑みは浮かべていた。

「そういや、お前はこないだ腹こわしてたない。もういいのか?」
「へへ、もう全然大丈夫っす!」

100人の隊員全員の状況を覚えている。現状2番隊も預かっているので、そちらもきちんと把握している。それが隊員にとってはうれしい。
食事を終え、淹れたてのコーヒーももらって、マルコはやっと人心地がついた。首をこきこき鳴らすのを見て、一人の隊員が手を上げる。

「あの、肩、もみましょうか?」
「……あー、頼めるかい」
「あ、はい!」
「いや、それならおれが!」
「おれが!」
「あーあー、そんないらねえよい」

最初に言い出した隊員が嬉々としてマルコの後ろに立つ。
着やせして見えるが、マルコは1番隊の中でも長身の方であり、身長は2メートルを少し越えている。白ひげ海賊団トップクラスの体術を使うため、しなやかな筋肉を保持しており、その肩も厚みがある。
が。

「マルコ隊長! なんスか、この凝り!」
「堅ぇだろ」
「堅いっス!!」

肩こりとはもう何年も仲良しだ。特に仕事の山を越えるとどうしてもがちがちに強張ってしまう。こればかりは不死鳥でも仕方ない。

「右腕とか大丈夫ですか? つったりとかしません?」

別の隊員が言い出すと、マルコはそうだなあとつぶやいて右手を軽く握ったり開いたりする。

「こっちも頼めるかい」
「はい!」
「ああ、ずりぃ!」

じゃあ左腕もとか足もと言い出した隊員らに、そっちはいいとマルコは制した。凝っていないところだとくすぐったいだけだ。
だが、もはやどうにもならないほど凝っている。ほとんど指が入らない肩に、負けた隊員はへこんでいた。ならばおれがと次々に他の隊員ががんばったが、岩のような肩こりに全員が負けた。

「すまないねい」
「いや、もう、ほんと……自分が情けないっす……」
「お前たちのせいじゃないよい」

若い頃は肩こりなど無かったが、やはりトシかと自覚する。そろそろ40が見えてきた。少しばかり遠い目をしてしまう。
皿とトレイをキッチンに戻し、マルコは料理長にごちそうさんと言った。

「島に寄ると、あんただけは痩せるからな。なんでも言ってくれ。いつでも作るからよ」
「ああ、楽しみにしとくよい」

手を振り、悲嘆に暮れている隊員らに持ち場に戻れと急きたてて、マルコは甲板へと向かった。

「終わったか」

気づいた白ひげの声に、マルコはうなずいて見せた。白ひげの前で円形に段差がつけてある空間のうち、白ひげの席のすぐ右側に腰掛ける。定位置だ。
背後に手を着き、海風を受けて仰向く。こののんびりとした時間は、山を越えた達成感も合わさって、なんとも言えない充実を味わえる。

(けど、さすがにちょっと疲れたよい……)

ここ数ヶ月、寄港がたて続いてしまった。白ひげの領海は広く、時々は見回らないと、馬鹿な雑魚が寄ってきてしまう。滞在期間は短くとも、その影響力を見せるためには、たまにでも寄港が必要だった。
その領地の間隔が狭かったため、マルコは長い期間落ち着けなかった。ただ港に寄るだでも雑多な書類が増えるためだ。

(……あー、もう4ヶ月か……)

思わず指折り数えて、マルコは嘆息した。
多忙だったとは言え、白ひげと4ヶ月もセックスしていなかった。高齢でも、白ひげはばりばりの現役である。ひと月に数日ほどマルコを独占しては、気を失うほどの激しさで抱く。
しかもそれはマルコのスケジュールに合わせてなので、実際にやりたいと思っても我慢してくれているのを知っている。それだけに心から申し訳なく思う。

(……もう10年を軽く越えちまったな)

数年の片思いの後、白ひげと身体を結ぶ関係になってから、すでにそれだけの年月が経っていた。1番隊の隊長になってからは、極力立場を優先させ、白ひげの片腕たらんとがんばってきた。
恋人でも夫婦でも、10年以上と言えば長い方になるだろう。それでもマルコは己に甘さを許さず、せめて白ひげの負担になるまいと、求められる時だけ抱いてもらっていたが。
抱かれたいなと、ふと思った瞬間、ずくんと腰の奥が疼いた。白ひげが欲しくてわがままを言い始めてしまった身体をどうしようと思う。
だが、けして自分からしたいとはねだらない。長兄である自分がそんなわがままを言ってはいけないと、堅く己を戒めている。

(たまにはてめぇで抜くかねい)

他の連中は島で女を買っただろうが、マルコにはもちろんそんな余裕は無かった。
一度そう思ってしまうと、だんだん切羽詰ってくる。疲れている身体は理性の制御を受け付けなくなる。
妙にそわそわしているマルコの挙動不審を、白ひげは見抜いていた。
そして通りがかったジョズに向かって、マルコには見えないよう、隊長と各船長らにしか通じない指文字で、明日の夜の予定を今夜へするように指示した。ジョズは了承し、それをサッチとビスタに伝えた。










久しぶりに隊長らが集っての晩餐だ。わいわいと騒いでいると、マルコもやっと日常に戻った気がする。
そこから、サッチがするりと姿を消した。そして自分の部屋からきれいにカットしたフルーツを山盛りにした皿を持ってくる。

「前の島で買い込んだんだ」
「お、うまそう」
「こっちはオヤジにな。こっちは皆に」

見た目はあまり変わらないフルーツ。だが、マルコはひくんと鼻をうごめかせた。ずいぶん甘い匂いがするが、隊長ら用の大皿からではない。白ひげの皿からだ。

「サッチ」
「あん?」

どきっとしたが、何食わぬ顔で振り向いたサッチに、マルコは首を傾げる。

「同じなのか?」
「いや、オヤジのの方が熟してる」
「ああ、それでかい……」
 
しかし目の前の大皿からもかなり熟した香りがする。これ以上とはどういうことかと思うが、なぜか頭が働かない。甘い香りが絡み付いてくるようで、妙に頭がふらふらする。
白ひげが持っているとりよいの実。これはほとんど甘くない。どちらかと言えば味は梨に近く、食感は桃である。だが、なぜか鳥には甘露になると言う。
ぽんやりと見上げてくるマルコを、白ひげがちらりと見やった。そして皿を差し出し、食ってみるかと言った。
マルコはこくりとうなずいた。美しくカットされた一切れを取り、歯を立てる。

「……うまい……」
「そうか。もっと食え」

猫にまたたび、不死鳥にとりよいの実。
マルコは無心に食べた。立て続けに5切れほどを口に入れて、ほうと吐息をつく。
その目元はほんのりと色づき、普段は眠そうな目が潤んで、とろんとしている。そして指や腕に垂れてしまった果汁をねっとりと舐め上げ、指を一本ずつゆっくりとしゃぶる。

「は、ぁ……」
(((ちょっと待て! なんだその色気はあああああ!!!)))

大半の隊長が動揺する中、ジョズとサッチとビスタはにやにやしている。古参三人の様子に気づいた隊長らは、仕組まれた事と感づいて様子を見守る。
 酔っ払ったマルコを初めて見た者は多い。明らかに酩酊している1番隊隊長から、突然青い炎が噴き出した。首から下、左半身の一部が羽をまとい、そこから青い焔がたなびいている。
それがうっとりとしているマルコを包み、妙な色香を際立たせる。制御できないのか、身体のあちこちが部分的に獣化している。
ふらりと立ち上がったマルコは、明らかな千鳥足で、青と金の尾羽を引きずりながら白ひげへと近づいた。そしておもむろにその足に抱きつき、よじ登って膝の上に立つと、想い人の胴へしがみついた。
そのまますりすりしているマルコに、隊長らは口をあんぐりと開けた。仕掛け人の3人も軽く目を見開いており、動じないのは白ひげだけだ。

「どうした、マルコ」
「ん〜〜」

あどけない子供のような笑顔で頬ずりする様に、周囲の船員達は固まってしまった。あの完全無欠の1番隊隊長の行動とはとても思えない。
だが、マルコは構わず懐き続ける。そしてひとしきり白ひげの肌を堪能した後、仰向いて爪先立ちになった。

「オヤジ……」
「ん?」
「キス」
「お」
「キス、したい」

徹底した秘密主義で、白ひげとのプライベートを一切見せないマルコが、万人の前でキスをせがむとは。
白ひげはうれしそうに笑うと、マルコを抱き上げて口づけた。そしてぷるんとふくよかな唇の奥へ、舌を入れる。

「ん……っふぅん」

マルコが白ひげの頭を引き寄せる。鼻にかかるよがり声を殺そうともせず、白ひげからもたらされる快感を全身で受け止める。ひくつく尾羽と揺らぐ焔に、マルコが感じているのがわかる。

「……マルコって、あんなんだっけな……」

ぽつりとつぶやいたサッチですらそう思うほどの劇的な変化だ。不思議なことに、マルコがかわいく思えてきた。
マルコがどれほど白ひげを好きで、どんなことをしたかったかがわかり、そのうれしそうな顔に、なぜか自分たちもほっとする。

「あいつも血の通った人間だったって事かな」
「そうだな」

白ひげとマルコの唇が離れる。細く繋がっていた糸を、白ひげの親指がきゅっとぬぐう。

「ん、もっとしたいよい」
「もっとか?」
「もっと」

白ひげの耳元へ顔を寄せ、抱いてくれよいと熱く囁く。その言葉に白ひげはいたく喜んだ。

「じゃ、こいつはもらっていくぞ」
「ごゆっくりー……」

まだすりすりしているマルコを抱いて、白ひげは立ち上がった。そのまま部屋に戻っていくのを見送り、隊長らはため息をつく。

「あれ、マルコがあまりの疲れに壊れたわけじゃねえよな?」

そうイゾウに問われて、ジョズが種明かしをした。古参の隊長らの画策とわかり、女形隊長は苦笑する。

「ま、びっくりはしたけど、そんな実があるなんてね」
「……マルコって、ああなっちゃうんだー」

しみじみとつぶやく最年少のハルタに、他の隊長らがうんうんと同意する。

「時々でもあんな姿を見せりゃいいのにな」
「プライドが許さないだろ。馬鹿高ぇもん」
「でも、なんか人間らしくていいよなあ」
「だよなあ」

幸せならいいじゃねえかと、海賊らしい快楽主義者の彼らは口々に言った。その意見に、仕掛け人の3人はほっとした。

「ま、問題はあいつの酔いが覚めた後だな……ははは、鳥足で蹴られたらどうしよ」

覇気まで込められたら、あの鋭い爪ならば首を掻っ切る事も平気でできる。日頃どつかれているサッチは、その攻撃力を嫌というほど知っていた。

「その時はオヤジと一緒に頭を下げるさ」
「一番の責任者はオヤジだよなあ」
 
実を用意したのも白ひげなのだ。自分たちはただ手伝っただけで。
それでも蹴りの数発は覚悟しておくかと、今さらながら乾いた笑いを浮かべる3人だった。











白ひげの部屋に連れ去られたマルコは、扉が閉じた途端に腕から飛び降り、邪魔な服をぱっぱと脱ぎ捨てた。さらに驚いた事に、白ひげをベッドへとうっと投げ込むという大技を披露し、白ひげを本気で驚かせた。

「おい、マルコ」
「うふふふふ」

白ひげの胸の上に乗り上げ、ちゅ、と愛らしくキスする。それがそのまま頬から首筋を伝い、胸に移動するのを見て、白ひげは思った。

(……おれが下か)

ただの上下というわけではなく、受け身という意味で。

(まあ、確かにこいつも男だしなあ)

自分の倍以上の体格と年齢を持つ同性を抱きたいと思えるのかと考えつつも、ちょっとうれしくもある。なにしろこんなに積極的なマルコなど、もしかすると初めてではなかろうか。
マルコは白ひげの広い胸をうれしそうにまさぐりながら、乳首に吸いついた。饅頭ほどもあろうかという埋もれた突起を舐め転がし、中心の孔に舌を差し入れる。ぞくりと身を震わせた白ひげは、優しくマルコの背を撫でる。

「……いや?」

不安そうに聞くマルコに、白ひげは笑ったみせた。

「いいや、気持ちいいぜ。好きな事していい」
「うん」

ほにゃっと笑ったマルコは、嬉々としてまた乳首に吸いついた。
甘くかじっていると、乳首がぷくんと浮いてきた。それを口に頬張りながら舐め転がすと、さらに堅く尖ってくる。

「ん、ん、ん」

楽しそうに吸わぶるマルコに、白ひげもうれしそうだ。
男同士の場合、どうしても受け身の方が負担が大きい。しかもこのあまりにも大きい体格差により、マルコは毎回へとへとになる。いくら不死鳥の身体で軽減できるとは言え、翌日の辛そうな顔を見ると申し訳なくなる。
それでも好きな時に抱かれるから呼んでくれと言ってくるいじましさに、白ひげは甘えてきたのだが。

(たまにはこういうのもいいかもなあ)

マルコの舌が弾くと、乳首から身体の中心へと細い電流が走る。ぴくんと反応がある度、マルコはうれしそうに微笑んでいる。
片方がすっかり勃ち上がったので、今度はもう片方だ。片方ずつしかできないのが残念そうで、ならばと片腕を翼に変えて、その柔らかな羽毛でさわさわとくすぐる。

「おい、……くっ」

着実に下肢に熱が溜まっていく。白ひげは熱い吐息を漏らし、苦笑した。

「マルコ、こっちはしてくれねえのか」

そう言われて、振り向いたマルコは高く浮き上がっている白ひげのズボンに気づき、喜んでベルトのバックルを外させた。ファスナーを下ろして、ズボンと一緒に下着も下ろさせる。白ひげも腰を浮かせて手伝った。
露わになった肉柱に、マルコはしがみついて頬ずりする。その刺激に、白ひげは年甲斐も無く昂ぶらせる。

「はむ、あむ」

白ひげの肉柱を包む皮膚は余人よりよほど厚いので、歯を立てるくらいでちょうどいい。だが先端はデリケートなので、先走りのぬめりをまとわせた掌と舌で優しく。
そしてぎゅうっと抱きしめて、身体全体で扱き上げるのがマルコのやり方である。
おかげで白ひげとしては気持ちよくて仕方ない。すくすくと育った肉柱はしっかりとした堅さを持って反り返り、白ひげの年齢を無視して屹立している。
マルコは喜んでいそいそと身体を起こし、左肩から右わき腹にかけてより下を全部鳥にした。そして白ひげの腰にまたがり、ゆっくりと肉柱を含んでいく。

「ん、ぁ……っ」
(ああ、さすがにおれに入れるわけじゃねえのか)

白ひげはちょっとほっとしつつ、蕩けそうな顔で腰を埋めていくマルコに目を細める。

「久しぶりだな」
「ん、ふ……ひさしぶり、だよい」
「つらくねえか?」
「だいじょうぶ……ふぅ……っ」

自分を貫く剛直に、青い焔がふるりと揺れる。マルコは白ひげの腹へ片手と片翼をつき、うれしそうに微笑む。

「オヤジと、したかったんだよい」
「グララララ、おれもだぜ!」
「愛してる」
「っ」

さらりと言われた言葉に、白ひげは硬直した。そしてマルコに納められている肉柱が、さらにぐうっと力を持つ。

「ん、ぁう……太いよい」
「……お前が煽るからだ」

どれほど白ひげを喜ばせたかわかっているのだろうか。散々怪物呼ばわりされている白ひげを純粋に思ってくれるその心が、白ひげの心と身体を優しく包み込む。それがどれほどの強さで白ひげを支えてくれているか。
マルコは軽く重心を前にやり、緩く腰を揺らした。はぁと漏れる吐息は熱く甘く、恋する人と繋がれたうれしさと、身体を満たしてもらえる幸せに笑みがこぼれる。

「ん、ん、あふ……」
「やっぱりお前の中は最高だな」
「きもち、いいかよい」
「ああ、たまんねえ」
 
マルコの動きだけではどうしても小さい揺らめきにしかならないので、いつものように腰を抱える。そして大きく揺さぶると、マルコは焔を上げながらのけぞった。

「あうっ、んっ、あ、ああ……っ!」

いつもより声が高い。素直な嬌声に白ひげはにっと笑みを深め、じっくりと抜き差しさせる。
羽毛と人の肌が交じり合うマルコの胸元で、白ひげの刺青が色鮮やかに浮かび上がる。
白ひげとしては、これ以外にも自分の所有の印を刻み込みたいのだが、うかつにキスマークでもつけるとマルコには大きなあざになってしまうのでできない。しかも鳥になるとあっさり消えてしまうので、ちょっと悲しい。

「オヤジ」

呼ばれて、白ひげは思考から戻った。マルコが眉間に皺を寄せている。

「他のやつの事でも考えてたのかよい」
「お前の事だ」
「……何考えてたんだよい」
 
不機嫌になってしまった。こんなにはっきりと顔に出すマルコも珍しいが、白ひげとしてはまずご機嫌を取らねばならない。

「お前にキスマークつけてえんだがな」
「……ああ」
「でっけえあざになるし、すぐに消えるだろ」
「……そうだねい」

マルコも首を傾げる。それは昔からわかっていた事だ。

「お前をおれのもんだって言いてえなあ」

その言葉に、マルコはきょとんとした。

「もうばれてるよい。それでも何かって言うんなら、足環でもつけるかい」
「……伝書鳩みてぇにか?」

マルコはにっこり笑ってうなずいた。

「そんで、おれは絶対にオヤジのところに帰ってくる。そしたら、毎晩オヤジと一緒に寝るんだよい」
「いいのか!?」

同衾も白ひげが望んでいた事だ。なんだこの大盤振る舞いは。

「だって、おれもオヤジが好きだよい。誰にも渡したくないよい」

きゅ、と締められて、白ひげは息を詰めた。中のうねりが白ひげを陶酔へと導く。

「オヤジに触りたいし、抱きしめたい。キスだってセックスだってしたいよい」
「本当だろうな」
「本当だよいっ」

あまりに珍しいので重ねて聞いたら、信じてもらえないとマルコがすねてしまった。まずい。
白ひげはマルコを抱きこみながら、体勢を入れ替えて組み敷いた。そして大きく律動を開始し、マルコはひくんと顎を上げる。
白ひげの身体を青い焔が押し包む。翼が広がり、白ひげの巨体を抱き寄せる。
この時、白ひげは深い喜びを覚えるのだ。この不死鳥を抱けるのは自分だけなのだと。マルコは自分だけのものだと。最高の幸せだ。

「うあ、あ、オヤジ……っいい」

ぐっぐっと押し込まれる肉柱に、マルコは悶える。不死鳥の身体は痛みを伴わず、快楽だけを脳に伝えてくる。そして長らく離れていた身体は貪欲に白ひげを欲しがっており、ぐいぐい中へ引きずり込もうとする。

「おいおい、搾り取られそうだな」
「だ……って、あう、きもち、いい、よい……っ」

白ひげに合わせてマルコも腰を使う。互いに求め合い、与え合うセックスには幸せしかない。
もっとと言われ、白ひげは年甲斐も無く激しく抱いた。マルコの本音が聞けて、完全に有頂天になっている。

「あ、あ、あ!! も、もう、い、く……っ!!」
「ああ、一緒にな」
「うんっ、ひ、い、あ……あ、あ、あ……っ!!!」

抱きしめあって、ほぼ同時に達した。青い焔の中へ、白ひげが広がっていく。

「ん、ん、ん」

ぶるぶるっとマルコが震える。はふはふと喘ぐ姿に、白ひげはついにやけてしまう。

「グララララ、良かったみてえだな」
「はぁっ、はぁっ……な、オヤジ……」
「なんだ?」
「……後で、もいっかい……」
「!」
 
これまで白ひげの年齢を思いやってか、遠慮からか、一晩に1回しかしなかったのに。

「足りねえのか」
「ん。オヤジの、いっぱい、欲しいよい」
「……っそうか!」

とりよいの実万歳。
その夜、白ひげは大喜びでマルコを貪りつくし、明け方近くまで啼かせ続けてしまった。











あったかいなあとマルコは思った。
これは、白ひげの体温だ。だっこされているのがとても気持ちいい。このままずっとこうしていたい。
大きな手がそっと頬を撫でてきた。マルコはつい微笑んで、その掌に擦り寄る。

「あー、確かに鳥ん時の動きだ」
「らぶらぶしたかったんだねえ」
「……?」

声が聞こえた。おかしいなと思った。白ひげの部屋にはそうそう誰も入ってこないはずなのだが。
そう思った瞬間、マルコは跳ね起きた。

「!!!」
「あ、起きた」
「おはよう。もう昼近いけどな」

マルコは呆然とした。自分がいたのは甲板の、白ひげの膝の上だった。毛布に包まって、どうやら白ひげにだっこされて寝ていたらしい。

「!!!???」

混乱の極地だ。何が起きているのか。昨夜の食事から記憶が無い。
しかも身体から毛布がずり落ちると、下は裸だった。さらに身じろぎした瞬間、腰に激痛が走った。

「い……っ!!」
「痛いだろ。無理するな。何しろ4回もやっちまったからなあ。グララララ!」
「うわー、オヤジ現役!」
「おれらでも4回はそうそうできねえぜ」
「な、なにがだよい!?」

慌てて問いただすマルコに、白ひげはうれしそうに答える。

「わかってんだろうが。遠慮しいのお前がもっとってせがんでくれたもんだから、おれぁはりきっちまってなあ。グララララ!」

超ご機嫌の白ひげの肌がつやつやしている。反してマルコは真っ青になった。男同士で裸などどうでもいいが、今の状況ははっきり言って尋常ではない。
その時、ふと気づいたのは、毛布以外に別に身につけている物があったからだ。毛布をどけてみると、自分の左足、すねの半ばくらいにひらひらとした飾りがついている。なんだこれは。

「夕べ、お前がおれのだって印をなんかつけさせてぇと言ったら、お前がいいって言ったんでな。なんかねぇかとイゾウに聞いたら、これがあった。鳥輪ってお前は行ってたが、足首だとやりにくいだろうからなあ。
それに、これつけたお前の蹴りを見てみたくてな」

マルコは唖然としてその飾りを見た。白い脚にぴったりとはりついたようなフリンジ。少し伸縮性があるのだろう、ずり落ちるような事が無い。

「オヤジとしちゃあ、これはキスマーク代わりだよねえ」
「指輪代わりと言ってもいいぜ。マルコ、外すなよ」
「う……っ」
 
取ろうとしていた手を言葉で制されてしまった。そんな意味を持つ物をおおっぴらに見せているのが恥ずかしい。余人はその意味がわからずとも、気持ちの問題だ。

「それに、お前はこれからずっとおれと一緒に寝るって言ってたぞ」
「そんな事言うわけないよいっ!!」
 
さすがに叫ぶマルコに、白ひげは目を伏せ、大きく息を吐いた。

「……なんだ、おれのぬか喜びか……」
「う……っ」

しょんぼりと落ち込む白ひげに、マルコは二の句が継げない。さらにサッチやイゾウがマルコをいじめる。

「あーあ、オヤジ寂しそう」
「マルコが忙しい時、ずーっとあったかく見守ってたのにな」
「ほんとはマルコをいっぱいかわいがりたいのに、我慢してたもんな」
「な」
 
マルコとて白ひげに悲しい思いはさせたくない。正直に言えば、白ひげがくれた飾りもうれしいし、できることなら共寝だってしたいが。

「いい。……マルコ、素っ裸だ。服着て来い」
「あ、ああ……」

 そもそもなんで自分はこんな姿で白ひげの懐の中でぬくぬく寝ていたのか。

「……お前が離れないって言ったんだ。一人でベッドにいるのが嫌だって言ってな。ずっとしがみついてたんだぞ」
「……」

なんだそのありえない行動は。鳥の時ならともかく。
そこでマルコはやっと気づいた。
日頃の抑圧が大きいせいか、鳥になると白ひげに懐きたくて仕方なくなる。どうしても本能や欲望が優先される動物系だ。不死鳥も例外ではなく、マルコはいつも後でやっちまったと頭を抱える。

「マルコも我慢しなくっていいんだぞ?」
「そうそう。オヤジを寂しがらせるなんて、一番の親不孝だ」

ずきっとマルコの胸が痛んだ。
以前からずっと白ひげへは申し訳なく思っている。マルコの思いを受け止めてくれた人に、自分は10年以上も連れ添って、今更何をと思ってはいるのだが。
ぐっと下唇を噛む。そして、毛布をまとったまま、自分の部屋へ戻っていった。

「……失敗かな」

サッチはため息をついた。普段はふてぶてしいくせに、プライベートの事になると途端に壁が厚くなる親友。どうせ普段からも白ひげの傍らにいて仕事してやがるくせに、とサッチとしてはため息しか出ない。

(案外、乙女なんだよなあ。昔は散々遊んでやがったくせに)

白ひげ海賊団に入る前は、ずいぶんやんちゃしてきたマルコの黒歴史。白ひげのマークを腹に抱えてからもしばらくは変わらなかったが、ある時期を境に突然変わった。
それをサッチはちゃんと気づいていた。本人は隠していたが、なにしろ生活態度全部が変わったのだ。原因は何か聞かされていなかったが、後に白ひげとの関係を知って納得した。

(誰も反対してねえのになあ)

マルコの想いを一番否定しているのはマルコ自身。イメージを自分に植え付け、1番隊隊長であるという肩書きに押しつぶされ、個人の思いを押し込めている。

(本当は、夕べみてえな事したいんだろうによ)

幸せそうな顔で、白ひげに甘えていた。鳥の姿でやるような頬ずりだった。あんなにべったべたに惚れているのを隠そうとばかりする親友が、ある意味不憫でならない。
なんとなく沈黙していると、かつかつという甲板を堅い物が当たる音がした。見やると、青い不死鳥が飛ばずに歩いている。その嘴の先には一枚の紙。
受け取った白ひげは、それを読んで目を細めた。そして不死鳥へ手をさしのべると、青い焔をなびかせた鳥は白ひげの膝の上に飛び乗り、落ち着いてしまった。その身体を、白ひげはうれしそうに笑って抱き寄せる。

「なんだい? なんて書いてあるんだ」

イゾウが言うと、白ひげはその紙を二人に見せた。

『腰が痛い』

普段は公式文書としても使えるほど美しい字体を誇るくせに、その一行は走り書きだ。それを書いている時のマルコを想像して、二人はにやりと笑う。
不死鳥はすっかりふてており、首を畳んで目を閉じている。それを大事そうに抱えた白ひげはご満悦だ。
それからである。マルコが普段の何気ない時間に、白ひげに寄り添うように立ち、そっとどこかで白ひげに触れるようになったのは。
夜も、急ぎの書類が無ければ、白ひげの部屋で寝るようになった。時々寝返りを打った白ひげにつぶされるらしいが、幸い不死鳥なので、怪我をする事は無い。重いが。

「いいんじゃね。幸せだろ、どうせ」
「どうせってなんだよい」

最近どこかしっとりと落ち着いた1番隊隊長。気を張っていたのだろう、いつも上がっていた肩が、ここしばらくで下りるようになった。指揮をする姿も緊張感を持ってはいるが、ぴりぴりとした必要以上の厳しさは無い。

(こいつには、ああいうきっかけが必要なのかもなあ、オヤジ)

親友と白ひげが幸せで、さらに白ひげ海賊団も順調に行くなら、それが一番ではないか。少なくともサッチはそう考える。

「近頃、あんまり肩を揉まなくなったな」

マルコは無意識に右肩を押さえていた。1番隊の連中に肩こりが酷いと聞いたが。

「ああ。ずいぶん楽なんだよい」
「オヤジに揉んでもらったりしてんのか?」
「、いや」

一瞬の間に、サッチはにたりと笑った。マルコは苦々しく舌打ちする。

「オヤジは酒の量が減ったしな。あれはどうしたんだ?」
「……おれを抱く時は飲まねえんだとよ」
「…………ふーん、ふーん、ほほー」
「うるせえよい」
「いいよいいよー。のろけならお兄さんが聞いちゃうよー」

マルコはちらっと横目でサッチを見やると、軽く手招きした。そのままサッチの襟首を掴んで、白ひげの前へ拉致する。

「サッチがのろけを聞いてくれるそうだい。好きなだけ語っていいよい」

目を丸くするサッチに、白ひげは豪快に笑った。

「グララララ! そうかそうか。いいぜ、のろけなら山ほどあらあ!」
「えええええええええ」

そうしてたっぷり2時間。白ひげのうれしそうなのろけ話につきあわされたサッチは、後方甲板に向かって走り、海原に向かって叫んだ。

「ちくしょ――!! うらやましくなんかねえぞ――!! 海のばかやろ――――!!」

その姿を見た船員らは爆笑した。見送ったマルコは苦笑し、楽しげな白ひげの手にそっと自分のそれを重ねる。
白ひげ海賊団は今日も平和である。








<終>









・・・・・・素敵すぎです!!!(悶え中)
ミミズで鯛を釣り上げた釣り人気分ですよvvv幸運すぎる、幸福すぎる!!!!!
ありがとうございます、みたらし様!(土下座)








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