(剣士×音楽家)







いつも楽しそうに、いつもしあわせそうに。ニコニコと笑って、何も自分に望まない恋人に。

「何か欲しいもの、あるか?」

何か与えたくて、そう尋ねたゾロに。迷うことなく、ブルックは。

「ゾロさんからは、もう充分貰っていますから。」

本当に楽しそうに、本当にしあわせそうに。綺麗に笑って、答えた。
けれど、ブルックに何かをあげた記憶なぞないゾロは。

「・・・・・・・なんだ、それ。」

その答えに納得いかず、「誤魔化しているのか」と少し不機嫌そうに眉根を寄せる。
けれど、ブルックは一瞬キョトンとした顔をしたあと。

「ゾロさんを誤魔化すなんて・・・・・・そんな哀しいことを、するはずないじゃないですか。」

少し、しゅんとした表情で。傷ついたように、ブルックが言うから。

「っ悪かった!」

すぐにゾロは頭を下げて、「言い方が悪かった」と謝罪する。
そして。

「・・・・俺に遠慮して、そう言ってんのかって。言えば、傷つけなかったよな・・・・。」

すまなさそうにブルックの心を気遣い、優しく頬に触れてくるゾロに。

「・・・・・遠慮なんか、していないです。だって私が欲しかったものをゾロさんは、たくさんたくさん、くれているんですから。」

ブルックは笑み崩れた、泣きそうな顔で。

「私がゾロさんの名を呼べば、どんな時でも応えてくれる声を。」

幼子が親に縋り甘えるかのように、頬に添えられたゾロの手に自身の手を重ねて。

「私がゾロさんに手を伸ばせば、どんな時でも触れかえしてくれる手を。私に、与えてくれるじゃないですか。」

それは、独りきりで50年間霧の海を彷徨っていた私が、ずっとずっと欲しかったものです。

ブルックは、ひっそり告白する。

・・・・・・暗い霧のなか。声を枯らすまで他人を求めて叫んでも、何も返ってこない静寂は痛かった。
・・・・・・暗い海のうえ。何度も見た生きている仲間の姿を現実だと想って伸ばして手に、何も触れなかった冷たさは痛かった。

「でも、今は違います。ゾロさんのお陰で、もう痛くないんです。
 ・・・・・・ありがとう、ございます・・・・・・。」

そう、言って。ひどく楽しそうに、ひどくしあわせそうに笑うブルックをゾロは己の胸に抱き込み。

「・・・・・・んな、当たり前のことで満足すんな!
 もっと望んで、もっとしあわせになりゃあ、いいだろうが!!」

ささやかすぎることしか望まない、痛みに耐え続けたことで当たり前のことを当たり前と思えない恋人に。ゾロは、求めろと訴える。

「・・・・・・・い、までも充分すぎるほど、しあわせなんですが・・・・・?」

けれど、その訴えに戸惑うブルックに。

「いま以上じゃないと、絶対に駄目だ。」

きっぱりと、言い切り。聞く耳を持たず、ゾロは。

「・・・・とにかく。今日は、町に出かけるぞ!
 そんで欲しいものや、やりたいことがあったら全部言え!手に入れてやるし、一緒にやってやるから!!」

ブルックの手を引いて。サニー号から、降りていく。
そのゾロの背中を見ながら、ブルックは。

(・・・・・こんなに、よくしてもらって。いいんでしょうか・・・・?)

なんだか恐いぐらいに、しあわせなんですけれど。

そう、困ったように想うのだけれど。もし、それをゾロが聞けば。

「〜〜〜〜〜だから!こんなことぐらいで、満足するな!!」

と、怒られること必至であった。







(只今、恋人のしあわせの認識のズレを正す真っ最中。)












ブルックは、ささやかなことで「しあわせです」って言ってそうなイメージが強くて強くて仕方ないです。
ささやかなことでも「しあわせ」だと想えることは、大事なことだけれど。でも、ささやかすぎると切なくて「もっと、しあわせを望んでよ!」と叫びたくなるのでゾロに叫ばせてみました。
・・・・「幸せな藻骨リク」のはずなんですが、なんだか微妙に切ないもの混ぜてすみません(土下座)気に入らないようでしたら書き直しいたします、みたらし様。(深深土下座)











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