(ゾロ→ブルック)









土蜘蛛を倒し、ブルックを助けてから告げてきたゾロの言葉を。にわかには、信じられなかった。
ゾロが抜け忍になってまで、自分を守ろうとしたことが。助けようとしたことが、信じられなかった。
だけど、いま。武器を捨てて土下座をし、手のひらを上に向けて害意がないことを精一杯に示しながら。



「守りきれないどころか、傷つけてしまって、すまなかった!!」



必死に謝罪をするゾロを見て。
彼を疑う気持ちは、ブルックのなかで薄れていくけれど。だけど、また信じていいものかどうかブルックは迷う。
忍は主の命令ならば、何だってする。いま、頭を下げて武器を捨てる振りぐらい、忍なら簡単にしてみせるだろう。


・・・・・だけど、ゾロは。言葉だけでなく行動して誠を、さきほど告げた言葉が偽りでないことを実証している。


それは主が望んで手に入れた宝刀を取りかえそうとする、敵である自分の命を『2回』も助けたことだ。
これは明らかに主に背いている行動だろうし、そしてなにより。ブルックより強いゾロが、いま簡単に斬り捨てることのできる自分をわざわざ守ることでまた信頼を得て懐に入りこみ命を狙う意味はないだろうから。
ゾロは、いま。本当のことを言っているのだろう。

ならば、あの日。・・・・・・・・・ゾロは、ブルックを裏切ってはいなかった、ということになる。

あの惨劇の日、彼は加害者として加わっておらず。それどころか、自分を守るために全てを投げ打ってくれていたのだ!
そのことを、ようやく知り。再びゾロを信じることができたブルックは、だからこそ恥じ入るように。



「・・・・・・・・わ、たしこそ。誤解して、ごめんな、さい・・・・・・。」



掠れた小さな小さな声で、謝罪する。
それを聞き逃さずに聞いたゾロは、弾かれたように頭をあげ。泣きそうに申し訳なさそうに嬉しそうに苦しそうに。たくさんの感情が混じった複雑な色をのせた顔を、次第に緩ませてから。

「こっちこそ、本当にすまなかった。だから、その。・・・・今度こそ、守らせてほしい。」

・・・・今度は、守り切るから。

そう告げてから、再び頭を下げるゾロに。だけど、ブルックは頷くことができなかった。
奪われた宝刀があるのは、かの将軍・徳川綱吉がおられる江戸城。そこに取り戻しに乗り込む自分は、宝刀を奪いかえすことができたとしても反逆罪に問われ、『死罪』はまず免れない。
そんな自分を守らせることは、ゾロを共犯として巻き込むだけでなく共に『死罪』を受けさせることになるから。だから、ブルックは頷くことができなかった。



(・・・・だって。死んで、ほしくない。)



ブルックの大好きな両親も、縁者も家臣も皆。みんな、この度の騒動で死に絶えた。
たった独り、無念に無残に終わった皆の気持ちを晴らすために。一族の宝刀を取り戻し、そして一族の使命を果たすためなら自身の命なぞ惜しくはない。
だけど。・・・・もう、親しい人間が死ぬ姿は見たくなかったから。そしてここまでブルックに良くしてくれた、恩あるゾロの命を惜しむがために頷けなかった。

そして、頷けないまま。彼の未来を考える。

いまの彼は抜け忍になったために追っ手から狙われているだろうが、あれほどの力があるのなら生き残れるだろう。なら、このままでいれば。これから先、ブルックに関わらずにいればおそらく、どこかで無事に生きていけるだろうから。
だから、ブルックは。ゾロの言葉に頷くことなく、背を向けて。

「・・・・助けてくれてことには、感謝します。ですが、貴方の助けはいりません。
 ここで、さよなら、です。」

一度も振りかえることなく、ゾロを生かすために。独り、駆けていった。










(死出の旅に。貴方は、いらない。)











・・・・・一年ぶりの更新は、相も変わらず好き勝手しています!←死ね
でも楽しい!!←死んでしまえ
・・・・じゃあ、そういうことで!!(全力逃走)←最低













戻る