(ゾロ→ブルック)







江戸に向かう最中。敵に囲まれ追い詰められていたブルックは、だけど自身を追いかけてきたゾロが敵の大将を討ち取ったことで敵の陣形が乱れに乱れたために、逃げ出すことに成功した。
だけど、そのために。共に逃げてきたが敵の大将から受けた深手のために倒れ、全身を己の血で汚したゾロの身体を縋るように抱きしめながら。

「・・・・っ、なん、で!」

止まらない涙で嗚咽で、上手く話せないブルックのグシャグシャな顔を。自身の痛みよりもブルックの嘆きを痛そうに見て、労わるために触れて慰めてくるゾロの手に、さらに涙も嗚咽もひどくなりながらも。

「・・・・なんで!追いかけてきたんですか・・・?!」

詰る言葉が止まらない。
また助けてくれたことに、また救われたことに礼を言わなければいけないと分かっているけれど。だけど、こんな。死にかけるまでして助けてくれなくていい。救ってくれなくていい!
そう、泣きながら訴えるブルックに。だけどゾロは、ブルックの涙を血を失いすぎたために白くなった震える指で拭いながら。

「・・・・今度、こそ。ちゃんと、できた、だろ?」
「・・・・え・・・・?」
「・・・・今度、こそ。・・・・ちゃんと、守りきれた、だろ?」
「!」

ゾロのお陰で怪我一つしていないブルックを、嬉しそうに誇らしそうに見ながら笑う男に。

「・・・・なんで・・・・?」

なんで、ここまで私にしてくれるの?

呆然と呟く音は。だけど、深手のために意識が朦朧としているゾロに届くことなく、消えた。








(・・・・想い人だけが分からない、男の覚悟。)









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