(剣士×音楽家)
「・・・・あー。あの、な。」
「なんですか?」
「あ、あー。や、その・・・・やっぱり、いいわ。」
毎日、声をかけれども続かない。あきらかに何か言いたいのに、何度も黙って終わらせるゾロに。
「・・・・怒りますよ?」
作った無表情で、ブルックがきちんと言わせようとわざと冷たく言えば。
「っ!悪い!」
ブルックに嫌われたくないゾロは、すぐに謝る。
「・・・・何を言おうとしたのか、言ったら許してあげます。」
そんなゾロの心境をイマイチ分かってないブルックは、速攻すぎる謝罪に少し面食らいながらも。話しを促すために、敢えて怒ったふりをして冷たく続ければ。
「こ、この間。これ、見つけたんだ。」
ゾロは許してもらおうと、必死に話しだす。
「楽譜、ですか?」
「たまたま、ぶらついていたときに見かけて。
で、だな。・・・・。
やる。」
傍にいるブルックにしか届かない、小さな声に。少しびくついて差し出された楽譜を持った手に、少し冷たくしすぎたかと反省して。
「私が、もらっていいんですか?
結構、いいお値段のする良い品ですが?代金、払いましょうか?」
ブルックが普段通りに話しかければ、ホッとした顔をして。
「いや、金はいい。もらってくれるだけで、いい。」
ゾロは、差しだし続ける。
「・・・・。
ありがとうございます。」
引く様子が全くないゾロに、躊躇はしたが受け取ることにし。笑って、ブルックが礼を言えば。
「・・・・べつに。たまたま、見つけただけであってだな・・・・。」
視線を逸らし、ボソボソと言い訳みたいに「たまたま、本当にたまたまだ」とゾロは繰り返す。
それに苦笑しながら、「ええ。たまたま見つけてくれたものですけれど、嬉しいですから。ありがとうございます」と言えば。嬉しそうに、情けなさそうに笑うゾロを。
「・・・・。」
なんか、ちょっと可愛いかもと思ったブルックがまじまじと見つめれば。
「な、なんだ、よ?」
途端、真っ赤になって狼狽し始めたゾロを。失礼かもしれないが、やっぱり可愛いかもと見続ければ。
「〜〜〜!!!」
ブルックの視線に耐えられなくなったのか、ゾロは無言で逃げ出した。
(・・・・私より強くて、頼りになる凄い人なんですけれど。なんか素直になれない照れ屋な子どもみたいで、可愛いですねえ。)
ブルックに恋する彼が聞けば、マジ泣きをすることを考えているが。
まさか、そんな可愛い子どもみたいだと思う相手に恋するとは、この時のブルックは気づいてないし、何も言わずに逃げ出したことで彼の気分を悪くさせたのではと真っ青になって頭を抱えているゾロも気づくことない未来であった。
(・・・・ただし、その未来が訪れるには、この調子では果てしなく遠いものである。)
ヘタレ万歳!←
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