(音楽家←剣士)
突然襲ってきた台風から、サニー号を守るために皆で動きまわっていたなか。
「・・・・っあ!」
ゾロと一緒になって動いていた、骨だけで軽すぎる存在が強風で、空に叩きつけられそうになった。
持っていた縄を捨て、必死で留めるために伸ばしたゾロの手に。置いていかれたくなくて縋って延ばされた手が、かろうじて届く。
そのかすかな触れあいを逃がすことなく、繋ぎとめ。ゾロは、居なくなりかけた存在を腕に収め、心底、安心した息を零す。
ここに、ブルックはいる。
それを実感したと同時、緊急時であったためとはいえ引き寄せ、抱きしめていることを認識すれば。
ビシリ
音が、周りに聞こえてしまうのでないかというほど。大げさに、ゾロは固まった。
「?ゾロさん?」
急に体を強張らせたことを不審に思い、窺うように覗き込んでくるブルックを。
「・・・・き、気をつけろよ!」
傷つけないように、引きはがし。真っ赤になった顔をゾロは、隠すために逸らして。
何事もなかったかのように作業に戻ろうとした。
けれど、その背に。
「助けてくださって、ありがとうございます。」
照れくさそうに、嬉しそうに。お礼を言う、やわらかな声がかかる。
その声に、再度ゾロは固まるが。
「・・・・・別に。たいしたことじゃねえよ。」
なんとか、とりつくろいの言葉を返すも。ブルックからは、赤くなったゾロの耳が見えていたので微笑ましく思われていたことに、ゾロだけが気づいてはいなかった。
戻る