(モリア撃破後・独白)
霧濃い海域にて彷徨う時間が、あまりに長すぎたのかもしれない。
影が戻ってみても、光の下を歩いてみても。
いまいち、現実感が、ない。
まるで自分の意識だけ膜に包まれているかのように、世界は曖昧で遠く。
蜃気楼の夢のなか、身体を漂わせているかのように世界は虚ろで頼りない。
(・・・・精神の防衛、なのでしょうねぇ・・・・。)
あまりに立て続けに、自分が願っていたことが叶えられていくさまに。喜びよりも嬉しさよりも、恐さが勝る。
このようなしあわせが本当にあるのかと、疑う心細さが認識を妨げ。万が一、幻であった場合に傷が酷くないよう構えている。
(まぁ、仕方ないことです。)
事実、過去に何度も何度も幻に傷つけられ、打ちのめされたのだから。
(・・・・。ダメ、ですねぇ。)
皆様が喜びに湧いているなか、暗い考えに囚われて暗い雰囲気を振りまくのが嫌で輪から外れて、独り。元気を出そうと色々試みるが。
「・・・・ダメ、ですねぇ。」
なかなかに重症な自分に、苦笑いを一つ、落とし。
「・・・・。空でも、見ましょう。」
幾度も幾度も焦がれた、光溢れる大空を見ればきっと元気になれるはず!
ならば、全は急げ。
誰にも迷惑かけないように、驚かせないように(なんせ動く白骨死体が、私なのだから!)隠れるようにしてじっと空を見て動かない私を、小さな船医さんが「怪我の手当てもしないで消えた!」と泣きながら探しているのに気づくのは、あと30分後。
(・・・・心配、されるなんて何十年ぶりでしょう?やはり、人こそ「喜び」です!ヨホホホホ!)
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