(剣士←音楽家で音楽家←剣士)






些細なことでもブルックが困っていたら、すぐに気づいてゾロは手を貸してくれる。
そして、そのあと必ず。

「無理すんな。俺を呼べ。」

ぶっきらぼうな、けれど優しさに溢れた言葉を、ゾロはブルックに惜しみなく与えてくれるから。ゾロを『特別』に想っているブルックの胸は、いつだって乱され、錯覚してしまいそうになる。
だから。

(・・・仲間、だからこその言葉です。私が、ゾロさんの仲間、だからこその言葉です。
 だから、優しさを。勘違いなんてしちゃ、ダメです。)

特別、なんて。勘違いしちゃ、ダメです。

いつも、いつも。自身に、ブルックは言い聞かせる。
そうして何度も、何度も言い聞かせて。ようやく、胸の裡が落ち着いてから。

「・・・・ありがとうございます、ゾロさん。
 でも、大丈夫ですから!私!」

にっこり、いつものように笑って。礼とともに、ブルックは手助けはいいですよと告げてから立ち去ろうとすれば。



ガシリ



細すぎる白の腕を、ゾロに囚われてしまった。

「・・・・ゾロ、さん・・・?」

いきなりの接触に、思わずうわずったブルックの声に構うことなく。

「・・・いいから。俺を呼べ。」

なんだか、必死な声で。ゾロは、ブルックに告げる。
なんで、そんなに必死なのかという疑問はあるけれど。ゾロに触れられているために、いま胸が痛いぐらいに酷使されているブルックは思考が纏まらないために分からないでいる。
そして分からないままでいるけれど、でもゾロの表情もなんだか必死なので。

「・・・・・はい・・・・・。」

好きな人の、そこまで必死な姿を無碍に出来ないブルックは。素直に、頷く。
そうすれば、安心したように。でも、少し照れ臭そうに笑うゾロの表情に。

(・・・・・・うう。そんな顔、卑怯です・・・・・。)

ますます、好きになるばかりです。

つい、恨みがましい視線を送ってしまうブルックだったけれど。

(・・・・でも。好きな人の笑顔は、やっぱり見れるとしあわせです。)

そう、想う気持ちのほうが強いから、恨みがましい視線も続かず。ほんの少し苦味が交じった、けれど本当に嬉しそうな笑顔を浮かべるブルックを見て。

「・・・・・・っ!」

頬を赤くさせ、心臓をバクバクさせているゾロを。仲間、としてしか見られていないと信じきっているブルックは不思議そうに首を傾げていた。








(無意識に、互いの心臓を必要以上に酷使させあっている2人。)













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