(剣士←音楽家)







自分の隣で眠りこけているゾロから、ブルックは離れたくて仕方ないのだけど。
がっちり、と。寝ているはずなのに何故かいきなりゾロが掴んで捕らえてしまった己の右手のせいで、離れることができないでいる。

「・・・・あううぅ。」

だけど密かに恋い焦がれている男との、あまりに近すぎる距離や触れあいは。はっきり言ってブルックにとって、心臓が保たないほど乱され痛いだけの現状だから・・・・・・傍から離れ、落ち着きたい。
けれど、ブルックがなんとか逃げようと離れようとするのだけれど。囚われている右手をピクリとも動かすことは叶わず、自力で逃げることは不可能だった。
だから気持ち良さそうに寝ているゾロを起こすのは忍びないけれど、放してほしいブルックはゾロを起こすために声をかけるが。なかなか起きてはくれなかった。
そして『起きてくれない』という、そのことが。ブルックにとって、最大の不幸の始まりであった。





・・・・・・起こそうとしているブルックを、寝ているゾロは煩わしく思ったのだろう。ゾロがブルックの右手を離さないまま、逃げるように身体を動かしたために。

「・・・・わ、わわ!?」

態勢を整える間もなく。ゾロの身体に、ブルックは激突することになった。

「は、鼻いたい・・・・って、私、鼻ないですけ・・・・。」

ぶつかった痛みで、呻くが。しかしブルックは、すぐさま固まることになる。



(ち、ちかい。近い近い近い近い近いいいいいい!!!)



寝返りに巻き込まれたせいで、右手を囚われたままなせいで。ブルックの身体はゾロの身体に乗りあがり、まるでブルックがゾロを押し倒しているかのような格好になっている。
その現実に。恥ずかしさで、数分は確実に気を失っていたブルックだったが。

「ぉ、おき、て。おき、ておきておきておきて、おきて。おきて、く、ださい。はなして、くださ、い。」

泣きそうな声で、拙い言葉で、今の状態からの解放を訴える。・・・・が。
さっきの起こすための声より、小さな掠れた声ではゾロが起きるはずもない。
しかし混乱しきっているブルックの頭は、それに気付くことができないまま呼びかけ続ける。
けれど必死になって、「起きて」と訴え続けるブルックだが。自身の胸を襲う辛さは、さっきまでと比べようもなく酷く痛くなっているので。

「起、きて、くださ、いよお、おお。」

半ば、べそをかきながら動揺して途切れまくった声では。・・・・・当然のことだが、ゾロが起きるはずもない。
全く起きる気配のない健やかに寝ているゾロに、大泣きしだしそうなブルックだが。さて、ゾロが奇跡的に声だけで目を覚ますのが先か。はたまた、他の仲間に今の状態を気付かれてしまうのが先か。
・・・・・どっちが先でも、ブルックの今の取り乱しようからブルックのゾロへの片恋は確実に悟られるために。ブルックの胸に、今以上の致命的な打撃を与えることだろう。








(あまりにあまりな状況に。私、死んでしまう!・・・・あ!でも、私、もう死んでいた!)












久しぶりに片恋書いた気がします(死)
片恋お題を、「両想いだと気付かなければ片恋だ」と言い張って書いている私が悪いのでしょうが(爆)










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