(剣士×音楽家)
叶うことがない想いであることは、誰よりも判っている。
想うことさえおこがましいことも、誰よりも解っている。
だから。
『好きだった』
と。
彼の姿を見ただけで募るあたたかいものに、過去の、終わった気持ちだと毎回言い直して、そして毎日言い聞かせる。
『だって、もう充分でしょう?生きて、好きな人に会えることは、とてもとても得がたい幸いなのだから。』
そうすれば、いつだって納得して裡に沈んでくれた熱が。いまは収まることなく燻ぶって、私を苛む。
・・・・・その原因はたった一つ、目の前の想い人のせいだ。
「・・・・少し、いいか?」
ほんの少し前。
そう、簡潔に尋ねてきたゾロさんの言葉を断る意志なんて私には欠片もなかった。
だって何の用事でも頼まれることは嬉しいし、何の用事もなくても声をかけてもらえることは楽しい。
それが好きな人からなら、なおさらに。
だから笑って頷きかえしたら、返事と同時に手をのばされ。やわらかな肉もあたたかな血もない私の白い左手を、とられた。
いきなりの接触に思わず手を払いかけたのだけど、硬く熱い指先がそれを許してはくれなくて。
なすがままに。
手のひらに、キスを。おとされた。
あまりに唐突であまりな出来事についていくことができず、ただただ思考は真白に染まり、身体は自由を潰され、声は音を忘れた。
そんな、完全に自失している私に構うことなく、ゾロさんは幾度も口づけをおとしていく。
いきなり何でこんなことをするのか、まるで分からない真意が恐ろしい。
丁寧に丁重に触れてくる穏やかさに、まるで彼の大切なものにでもなったかのような錯覚が恐ろしい。
グルグルと渦巻く感情は黒く、私を混乱させていく。だけど、そこから連れ出してくれるのも、原因たる男で。
「・・・・伝わったか?」
俺の気持ちが、と不敵に笑った。
「っ!」
ここまでされれば、いくら鈍い人間でも分かる。・・・・にわかには信じられないことだけれど。嘘みたいだけど、好きな人と、両想いだ。
けれど、ゾロさんの隣にはもっと相応しい誰かがいるのだと考える冷静な私がいる。
あきらかな人外、あからさまな化け物の自分ではなく、あたたかな血肉をもった、優しい誰かが。きっと、自分なんかよりしあわせにしてくれるのだと。
だから嬉しくてしあわせであっても、やはり断りの答えを告げなければとすれば。
「・・・・まあ、お前の気持ちは聞かなくても分かるからいいけどな。」
俺が好きだろう、お前。
とんでもない爆弾発言をおとされた。
ぎょっとしている私をおかしそうに、ゾロさんは笑うけれど。
私はちっとも笑えなかった。
(一体、いつ私は致命的な失敗をして致命的な気持ちを知られたのだろう?!)
リベンジ甘い話。
てかタイトルとあまりかみ合っていない気がする(汗)不敵でなければゾロじゃない!と書いていったら、あれ?懇願のキスがまるで宣戦布告みたいなキス(おい)になっていませんか??
・・・・ああ、でもいまマイ一押しは不敵なゾロ×困り果てるブルックだしなぁ(なにそのマニアックな一押し?)51巻、500話でチョッパーに怒られて困っているブルックが可愛くて可愛くて。
そして51巻の494話の心配するブルックに「気にするな」と笑うゾロが不敵にカッコよくてカッコよくて。・・・・・はい、言い訳ですね。すみません。もう少し、精進いたします。
戻る