(藻骨)ビター味





・・・・それは周りを見ていれば、すぐに分かったことなのだ。
けれど太陽のしたを歩けることが、嬉しくて嬉しくて。ゾロと一緒に歩けることが、嬉しくて嬉しくて嬉しくて。
嬉しさにばかり目を向けていたものだから、ブルックは、つい周りを。ゾロに向けられている、周りの感情というものを今まで見落としてきたのだ。
だけど、見落としてきたものに。今になって、ようやく気づいてもブルックは。

(・・・・一緒に。もう少しだけ、一緒に・・・・。)

ずるいことだと、分かっているのに。
ゾロと一緒に町中を歩いているとき、必ず向けられている周りの視線を。声をかけるまでには至らないが、でも、過分に異性としてゾロを意識している周りの視線を見てみぬ振りをし続けている。
けれど見てみぬ振りをしていても、どうしたってついてくる視線に後ろめたい気持ちは消えることはないから。ゾロと本当に、このまま一緒にいてもいいのだろうかという悩みに、ブルックは苛まれていた。
今、ソロはブルックと一緒に楽しそうに歩いてくれるけれど。でも、ゾロだって健全な男子だ。
骨だけの男の自分より、あたたかなぬくもりを持つ女性が隣にいるほうが断然、いいはずだろう。
だから、いま。一緒に歩くことを断わり、ゾロに視線を向ける女性たちが、声をかけやすいように身を引くべきだと頭では理解しているのだが。
「?どうした、ブルック?はやく、行くぞ。」
今も向けられている女性の熱い視線に気づかず、ゾロから一緒に行こうと声をかけてくれるから。
「・・・・っはい・・・・!」
理解しているくせに、ブルックはその声を拒絶できない。
気づいていないんだから、いいじゃないかという酷い思考で。ブルックは、ゾロと歩くことを断らないでいる。
それに、ひどい後ろめたさを感じながらも。
(・・・・・声、を。ゾロさんに、声をかける女性が出てきて、気づくまで。
 せめて、それまで一緒に・・・・・!)
卑しい言い訳を内心でして、ブルックはゾロの隣を歩き続ける。
そうして2人で、色々な店を覗きながら暫く歩いていると。



「・・・・少し、いいですか・・・・!」



ゾロを熱っぽい、潤んだ目で見上げながら。少し緊張しながらも、声をかけてきた女性が現れた。
10代後半の、可愛らしい存在に。ゾロは訝しげに、ブルックは覚悟を決めて見ていた。
彼女の口から語られるのは、やはりゾロへのお誘いで。それを聞き、ゾロが口を開き、答える半瞬前。
声が決して震えないよう、身体が決して震えないよう。普通に、自然になんとか振る舞って、ゾロからの承諾の答えを目の前で聞きたくない弱さ故に。
「じゃあ、私。お邪魔なようなので、失礼しますね!」
答えを、わざと遮ってから。ブルックは2人の前から居なくなろうとした・・・・・のだが。
「悪いな。」
簡潔にゾロは、何故か女性に向かって謝り。何故か、立ち去ろうとしたブルックの隣に来るから。
「「え?」」
思わず、誘いをかけた女性とブルックの声がハモる。
けれど、ゾロは重なる驚きの声なぞ気にもしないで。
「あんたより、こいつのほうがいい。」
あっさり、と誘いを断って。可愛らしい女性の隣を放棄して、ブルックとの散策を続行しようとするから。
「・・・・・。」
思わぬ事態にブルックは絶句し、固まった。









この本は、「デート」をお題にした「藻骨」・「布骨」・「三骨♀」・「??骨」の短編4本詰め合わせ本となっております。
そしてタイトルにある「チョコレート」の味(ブラック・ビター・スイート)と、話の甘さが連動したデート話になっております。








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